中国「感染リスク判定アプリ」、“病歴・飲酒・喫煙データ収集構想”に波紋:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(1/3 ページ)
日本では開発の遅れが取り沙汰される新型コロナウイルスの「接触確認アプリ」だが、中国では2月初旬から運用が開始されている。ここでは中国アプリのこれまでと現状、第2波に備えた拡充構想とそれに対する市民の反応をレポートする。
世界で最初に新型コロナウイルスが拡大した中国は、4月に感染をほぼ収束させ、5月1日からの5連休を機に「経済回復」の動きを本格化させた。政府がレジャーや旅行を奨励したことで、街や行楽地にかなり人や車が戻ってきている。その中国で、PCR検査の徹底と並んで、経済と感染症対策を両立させるツールになっているのが、体調や移動履歴を基に個人の感染リスクを「赤」「黄」「緑」で示し、リスクが高い人の行動を制限するスマートフォンアプリ「健康コード」だ。
「緑」が表示されると出勤OK
「僕は5月の連休中、電車で1時間ほどかけて市内の海辺へ写真を撮りに行きました」
大連市の会社員、李華傑さんはそう話した。中国政府は消費回復に向けレジャーを奨励するようになったが、感染リスクを減らすため近場での行楽を求めている。5連休を終えた李さんが出勤すると、守衛に健康コードの提示を求められた。李さんによると、健康コードが「緑」の人だけがオフィスに入ることができるという。
「(かつてクラスターが発生していた)吉林省に行った人は、健康コードが黄や赤になり、在宅勤務を命じられたと聞いています」と李さんは話した。
世界で感染拡大が続く中、秋冬に来るといわれる第2波に備え、日本を含む多くの国が感染者との接触を通知するアプリの開発を進めている。一方、データの収集範囲や、データを誰が管理するかなど、プライバシーの保護も課題になっている。
至るところに監視カメラが設置され、国が当たり前のように個人情報を収集する中国は2月、身分証明書番号などを入力すれば、自身が感染者と接触したかが分かるシステムを開発した。ただしこれは、あくまで個人に対して自発的な受診と隔離を促すシステムにすぎない。
活動を再開したい企業や、人々の移動を適切に行いたいと考える行政のニーズから生まれたのが、健康コードだ。
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