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中国「感染リスク判定アプリ」、“病歴・飲酒・喫煙データ収集構想”に波紋浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/3 ページ)

日本では開発の遅れが取り沙汰される新型コロナウイルスの「接触確認アプリ」だが、中国では2月初旬から運用が開始されている。ここでは中国アプリのこれまでと現状、第2波に備えた拡充構想とそれに対する市民の反応をレポートする。

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モバイル決済アプリに機能追加

 中国の新型コロナ対策では、EC大手のアリババグループが極めて重要な役割を果たしている。医療機関へは“スキャンしたCT画像から新型コロナ感染の可能性をAIが判断する技術”を提供し、消費者に対してはネットスーパーや出前アプリのサービスで生活を支えた。健康コードは中国政府や地方政府が運営しているが、「原形」といえるツールが最初に登場したのも、アリババの本社がある浙江省杭州市だった。

 浙江省杭州市は、中国の中でもかなり多くの感染者を出した地域だ。杭州市余杭区は感染を抑えるために非常に厳しい行動制限を課すとともに、市街地での検問を徹底しており、企業活動の再開にあたっては、検問の効率化を迫られた。

 中国の報道によると、余杭区はアリババのエンジニアと協力し、2月初旬に「オンラインの関所」の役目を果たすQRコードを使った入退室管理システムを開発、モバイル決済アプリ「アリペイ(支付宝)」内の機能として実装した。

 当初は施設の入り口などで紙のQRコードを読み込んで移動の履歴を記録するツールだったが、その後、地方政府がユーザーの入力した体温や体調、移動履歴やビッグデータなどを用いて、個人の感染リスクを3色で判定する「オンラインの信号」のような健康コードに発展させた。地域によって多少の差があるが、基本的には緑なら施設への入室や検問などの通過を許され、黄が表示されると1週間、赤が表示されると2週間の隔離となる。

 同システムは2月中に浙江省全域をカバーするようになったが、10億人以上のアクティブユーザーを持つメッセージアプリ「WeChat(微信)」を運営する、アリババのライバルテンセントも、WeChat内に「健康コード」を実装し、全国に広がっていった。

詳細な運用は各地まちまち

 これら健康コードは、コードが3色で表示されることや、「濃厚接触者」「発熱者」が赤になることは中国各地で共通しているが、各地方政府が主導する形で導入されたため、詳細な運用はまちまちだ。冒頭で紹介した李さんが使っている大連市の健康コードはGPSと連動しておらず、自己申告したデータを基に結果が表示されるため、職場は移動履歴を基に結果を表示する中央政府の「健康コード」の提示も併せて求めている。


国が出している移動情報に基づいた「健康コード」

 3月下旬に香港から上海へ入国した日本人男性は、2週間の隔離とPCR検査を経て健康コードが緑になり、自宅のある別の都市への移動を許された。だが、都市をまたいだため再び健康コードが赤になり、そこでも2週間隔離が必要なのか当局に連絡を取らなければならなくなったという(交渉の末、隔離は免除となった)。

 運用が不統一で混乱と不便が生じていることから、中国政府は4月、健康コードの国家標準を制定し、統一を図っている。


広州市に住んでいる日本人男性は「施設に入るときには自分のスマホのキャリアに対応したQRコードを読み込み、画面を見せている」と話した

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