ウィズコロナ時代、新人研修はどう変化していくか オンラインの強みと弱み:社員研修のプロが語る(3/3 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインで新入社員研修を行う企業も少なくない。社員研修や人材教育を手掛ける企業「新規開拓」の朝倉千恵子社長が、オンライン研修の強みと弱みを解説する。
1つ目が、講師が受講生の細かい部分までをチェックできない点です。画面越しに受講生と目を合わせようと思うと、どうしてもカメラの方を見る必要があります。そうするとディスプレイに映る受講生の様子は見づらいですし、見えていたとしても上半身のみです。リアルの場のように講師が話しながら、全体を俯瞰して、頭の先からつま先まで緊張感を持って研修に臨めているかを見極めることは難しいのです。
2つ目が、これまで以上に「声・話し方」に注目されることです。どんなに素晴らしい内容を語っていたとしても、声がやぼったかったり、話し方に癖があるとそればかりが気になって、話の内容に集中できなかったりすることがあります。例えばどんなにスタイルが良くて立ち居振る舞いがかっこいい講師でも、そうした良さはオンラインでは見えなくなりますので、オンライン研修での講師選定の基準は「人を引き付ける話し方ができるか」が優先項目に上がってきます。
3つ目が、インターネットやビデオ会議システムの不調に気を付けなければいけない点です。大きな失敗談がありました。当社主催のセミナーで接続不良が起こり、こちらの映像や音声が途切れ途切れになってしまったのです。事前準備を行っていたにもかかわらず、当日のまさかの事態にどうすることもできず、結局その日は中止、後日振り替えとさせていただきました。
そのとき、自分がコントロールできないものに依存している状態は非常に危険だと再認識しました。それからは、1つのシステムで接続が切れてもすぐ他に乗り換えられるようにしたり、予備のパソコンやネットワーク回線を用意しておいたりと、特にリスク管理に気を付けています。
このようにオンライン研修のメリット・デメリットを踏まえながら、「ではどういう進め方が最適か」ということは、各企業の人事の方々とまさに話し合いをしているところです。
新人研修で学べることを棚卸しする
これからの新人研修の在り方ですが、リアルか、オンラインか、動画か、というどれか1つの選択肢が正しいということではなく、それぞれを組み合わせた、良いところ取りの形式が増えていくと考えています。新人研修の内容を簡単に列記してみると、目的別に4つのカテゴリーに分かれます。
<動機付け>
- これからの社会人生活を頑張ろうと思えるメッセージ
- 学生から社会人への意識改革
<知識の習得>
- ビジネスマナー(敬語、席次、文書の書き方など)
- 仕事の受け方(報連相)
- あいさつや返事などの必要性
- お客さま、上司など目上の方に対する接し方
<行動訓練>
- あいさつ、返事、基本姿勢
- 名刺交換
- 接客用語、所作
<専門スキルの習得>
- 各職種で必要な専門性の高いスキル
最初の<動機付け>は、講師1人に対して1対nの形式でのオンライン講義、<知識の習得>はオンライン講座とテキストでの復習、<行動訓練>は動画教材で繰り返し学習し、定期的に講師1人に対して、受講生1人〜3人程度の小規模ミーティングで習得度チェック、<専門スキルの習得>は専門講師によるオンライン講義の後、現場でのOJT──というように、内容と目的によって組み合わせることで、これまで以上の効果が発揮できる可能性も十分にあります。
このように内容と目的によって組み合わせることで、これまで以上の効果が発揮できる可能性も十分にあります。
今、人事担当者の方から多く寄せられているご相談が「リアルの研修ができない今、どうやってオンラインでその代わりができるか」というものです。でも、せっかくこんな時代がやってきたのです。オンラインをうまく取り入れながら、今まで以上に効果が発揮できるような研修を考えてみませんか。
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