「リモートワーク」は、企業文化に死をもたらすのか(1/3 ページ)
リモートワークが長期化する中、会社としての一体感や仲間意識への影響が心配されている。アメリカではかれこれ3カ月近く「リモートワーク」を強いられている企業も少なくなく……。
著者プロフィール:
南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「アメリカで『小さいのに偉大だ!』といわれる企業の、シンプルで強い戦略」(2016年4月、PHP研究所)、「未来企業は共に夢を見る〜コア・バリュー経営〜」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。
「リモートワーク」が長期化する中で、米国企業の多くが、会社としての「一体感」や「仲間意識」をどのように維持するか、取り戻すか、また育むかを模索している。
この3カ月の体験を通して、アメリカのホワイトカラー・ワーカーの多くが、生産性や機能的な側面からいえば、オフィスでも在宅でも支障なく仕事をこなせることに気づいた。しかし、「同僚」同士が顔を合わせることがめったになくなった今、どうやって「企業文化」を維持していくのか、また、「コラボレーション」を促進するのかがリーダーシップの悩みの種となっている。
多くの企業が「ズーム」などのデジタル・テクノロジーを活用しコミュニケーションの活性化を図ってはいる。たとえばある会社では、社内専用のスマホアプリを立ち上げ、CEOやその他の経営陣の動画メッセージを定期的に配信している。メガネのマイクロブランド、ウォービー・パーカーは全社会議の頻度を増やし、全社員が「会う」機会を増やしている。
社会意識の高いことで知られるヘルス・バー・メーカー、カインドでは、「ヴァーチャル・ウォータークーラー」と呼ばれるチャット会議を週に数回行っている。アメリカのオフィスでは、ウォータークーラーの周りに同僚同士が非公式に集い、雑談したり情報交換をしたりする。それをオンラインで模倣しようという試みだ。参加は自由であり、入退室も自由。320人いる社員の多くが、平均15分程度参加するという。
パンデミック以前からリモートワークへのシフトは徐々に始まっており、それに伴い「コアバリュー(社内で共有する「中核的価値観」)」の考え方がもてはやされてきた。会社の結束を強化し、維持するためのひとつの手段として、「コアバリューの共有」が叫ばれ、社内でのリーダー教育が行われてきた。
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