「リモートワーク」は、企業文化に死をもたらすのか(2/3 ページ)
リモートワークが長期化する中、会社としての一体感や仲間意識への影響が心配されている。アメリカではかれこれ3カ月近く「リモートワーク」を強いられている企業も少なくなく……。
進行する「会社離れ」
しかし、これらの努力をもってしても、働く人の「会社離れ」は避けられないようだ。アメリカでプルデンシャル・ファイナンシャル社が行った意識調査によれば、アンケートに答えたアメリカのホワイトカラーワーカーの半分以上が「(リモートワークが長期化するにつれて)会社との心のつながりが弱くなっていると感じる」と回答しているという。
「リモートワークが長期化・定着するのに伴い、企業文化が徐々に損なわれていくのではないか」とトップ経営者の多くが懸念している。そしてこれは、企業のリーダーシップにとって最大の関心であるべきだ。
前述のように、オンラインで「全社会議」を行っている会社はたくさんあるが、北米アクセンチュアのエサレッジCEOは、社員が「全社会議疲れ」の状態にあるのではないかと憂慮する。北米アクセンチュアでは、6万人の社員を対象にオンライン全社会議を定期的に開催しているものの、それとは別に、チームリーダーやプロジェクトマネジャーがチームメンバーに定期的に連絡をとり、問題を早期に発見して解決につなげることを奨励しているという。個人レベルでのコミュニケーションを重んじているということだ。
イノベーションにも影響
リモートワークがイノベーションの鈍化につながるのではないかという声もある。アイデアは思いもかけない時に生まれるものだ。必ずしも正式な会議の席ではなく、カフェテリアでランチの順番を待っている間に同僚と何気なく交わした会話や、廊下での立ち話がヒントになる。
「スケジュールに従ってイノベーションを起こすことは不可能」と、フォードやアディダスなど大手とのコラボレーションで知られる3Dプリンティング技術開発会社、カーボン社のカルマンCEOは語る。『イノベーション』は偶然に触発されて生まれるもの。リモートワークで個々が孤立している状態でイノベーションを起こすのは難しい、ということだ。
リモートワークで成果を上げている企業も多いが、そうした企業の多くが、従業員の大多数が長年共に働いてきた同僚であり、オンラインの会議でもお互いの表情を敏感に読み取れる、また、同僚の好みや癖について予備知識を持ったコミュニケーションができるという利点を備えている。しかし、新入社員がリモートで働く場合はどうなるのか。同僚との心のつながりや仲間意識を育むことができずに、その結果、企業文化も衰えてしまうのではないか。
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