「リモートワーク」は、企業文化に死をもたらすのか(3/3 ページ)
リモートワークが長期化する中、会社としての一体感や仲間意識への影響が心配されている。アメリカではかれこれ3カ月近く「リモートワーク」を強いられている企業も少なくなく……。
「オンラインゲーム」や「オンライン読書会」、飲み会やコンテスト、「オンラインダンスパーティ」など、会社によってはあらゆる社交イベントを企画しているところもある。しかし、時折、会社では避けて通れない「不都合な会話」、つまり、上司から部下への叱責や同僚同士の意見の衝突は、本来なら顔を合わせて行われるのがベストだ。オンラインでは伝わらないニュアンスがたくさんある。
また、人間関係とは、何気ないちょっとしたふれあいにより育まれていくものだ。アメリカの大手家具メーカー、ハーマンミラーのCEOアンディ・オーエン氏は、ロックダウン以降に失われてしまったと感じるものとして「社員との雑談」をあげる。同氏はかつて、オフィス内を巡回して、社員のデスクに立ち寄り雑談をするのを日課としていたという。主なトピックは社員の家族の近況などだ。なにげない、他愛もない話かもしれないが、こういったふれあいこそが同僚間のつながりをつくり、企業文化を築くのだとオーエン氏は語る。
「それは、事前にスケジュールされたオンライン会議からは生まれないものです」
「効率化」という点では、リモートワークは価値の高い、「今ふう」の働き方かもしれない。だがそれで失われるものもある。人と人とのつながりからもたらされる「企業文化」や「仲間意識」は、定量化さえできないが他の何物にも代えがたい企業力の源である。効率の名のもとにこれら重要な要素が犠牲になることのないように、「新しい働き方」を考えていく必要がある。
コアパーパス(会社の存在意義)やコアバリュー(中核となる価値観)の明確な定義や徹底による「唯一無二の企業文化」「独自性あふれる企業文化」の醸成は、ここ10年ほどアメリカ企業の経営戦略の柱として注目され、ウォルマートなどの大企業から、「スモールジャイアンツ」と呼ばれる中小規模企業まで規模や業種を問わず導入されてきた。リモートワークの弊害として予測される企業の一体感や仲間意識の弱体化リスクをヘッジする手段としても、コアパーパスやコアバリューをもってして社内のベクトルを合わせる手法は、企業経営者やリーダーが深刻に取り組むべき課題だといえるだろう。(石塚 しのぶ)
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