RAV4 PHV 現時点の最適解なれど:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
トヨタはRAV4 PHVを次世代システムとして市場投入した。世間のうわさは知らないが、これは早目対応の部類だと思う。理由は簡単。500万円のクルマはそうたくさん売れないからだ。売れ行きの主流がHVからPHVへ移行するには、PHVが250万円程度で売れるようにならなくては無理だ。たった18.1kWhのリチウムイオンバッテリーでも、こんな価格になってしまうのだ。まあそこにはトヨタ一流の見切りもあってのことだが。
トヨタは一つに絞ることなど考えていない。今売れる商品、それは内燃機関とHVで、環境規制をクリアしながらガンガン売り上げを立てる。そうやって世界で1社だけCAFE規制をクリアしつつ、毎年1兆円の研究開発費を計上して、かつ2.5兆円の利益を出し、「きっと20年くらい先に売れるだろう」とFCVを店先に並べているのだ。トヨタ自身だって、10年以内にFCVが月に何万台も売れるようになるなんてカケラも思っていないのだ。
ちなみに同じように当分もうかりそうもないシステムの内、FCVは売るけれどEVは売らないのは、FCVはまだまだ技術が十分に確立されていないから、トヨタが先陣を切ってやっておかないと実用化できないからだ。対してEVは、すでにHVやPHVで技術を習得しており、かつ先行事例が豊富にあるので、必要なタイミングになったら出せばいい。
トヨタは今後数十年間、ユーザーが選ぶであろう推進システムのトレンドについて、当然予想はしている。向こう10年は主にHVが選ばれ、その間に少しずつPHVが選ばれるようになり、10年後あたりにPHVに主流が移ってくれるといいなぁと思っている。その時点でもHVしか売れないと、CAFEの2030年規制がクリアできず、多額のクレジットを買わされるからだ。
そこから5年なり10年なりかけてEVが増えていき、新時代のシステム多様化の中で、適材適所的にちらほらとFCVが選ばれる場所や場面も出てくる。そういう絵柄である。
その予測は筆者も同意である。エンジンを使ったクルマが珍しくなるのは早くとも2040年以降だし、HVやPHVを含むエンジン付きのクルマが今のEVくらい、それはつまりグローバルで見て新車販売の2%とかになる時代を、筆者は見届けられないだろう。
関連記事
- 日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4
トヨタ自動車の新型RAV4は北米で屋台骨を支える最量販車種。無骨な方向に進化し、大型化して日本に戻ってきた。3種類の四輪駆動方式の違いと特徴はいかに。 - 新型ハリアーはトヨタの新たな到達点
トヨタは、売れ筋のSUVマーケットにまた強力な新兵器を投入する。SUVバリエーションの最後のピースであるハリアーだ。結論からいえば、新型ハリアーは、多面的なその調律に成功し、トヨタブランドの範疇(はんちゅう)の高級というものが、バラバラの要素ではなく、一つの方向にキチンと収斂(しゅうれん)して、なるほどと思わせるものになっていた。 - EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。 - トヨタ、「RAV4」のPHVを発売 最上級モデルとして投入
トヨタ自動車は6月8日、SUV「RAV4」のプラグインハイブリッドモデル「RAV4 PHV」を発売した。SUVの人気車種に初のPHVを投入し、RAV4の最上級モデルとして展開する。 - SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.