米国との密な連絡、習近平主席の指導 〜数字で読み解く中国の新型コロナ白書(前編):浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/3 ページ)
中国政府は6月7日、新型コロナウイルスの初の患者発生から封じ込めまでの取り組みを白書として公表。内容は、米国などの海外からの批判に対し、中国がいかに適切に対応したかをアピールしたもので、時期により5段階に分かれている。ここでは、2020年2月中旬までの最初の2段階を紹介する。
第2段階に対する筆者の分析
中国の新型コロナウイルスの感染の実情は1月20日に公表され、23日には武漢市が封鎖された。ウイルスは春節前に武漢市から各地へ飛び散り、全国的に厳しい対策が取られた。対策の効果が見え始めたのは2月中旬で、ウイルスの特性も徐々に明らかになっていった。
白書はこの時期に、中国がWHOだけでなく、米国と情報を共有したことを再三強調している。トランプ大統領が「ウイルスを広めた」として中国を攻撃しているのに対し、白書は「早期から現場では情報共有しており、米国で感染が拡大したのは、対処が遅れた米政府の責任」と暗に批判している。
また、当時、習近平主席は1月20日の重要指示と、3月の武漢視察以外にほとんど公に発信しなかったが、白書はその裏で「国の指導者は国民を最優先し、毎日指示を出していた」と主張している。実際にはハイレベル専門家グループが武漢封鎖など鍵となる決断を進言しており、既に明らかになっている専門家の発言と白書での習近平主席の言動はほぼ一致しているため、中央政府が専門家の進言を受け入れ行動していることも示唆されている。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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