野村克也が『ID野球の申し子』古田敦也に2時間の正座説教をした理由――「怒るのではなく叱る」育成術:野村克也と江本孟紀『超一流』の仕事術(2/2 ページ)
6月19日、プロ野球が開幕した。野村克也と江本孟紀の共著『超一流 プロ野球大論』の中からビジネスや部下の育成に関わる部分を抜粋してお届けする。後編では古田敦也や江本孟紀などを育ててきた野村監督の育成術についてお届けする。
「ベンチがアホやから野球がでけへん」の原因は野村監督
江本: 実際に野村克也とバッテリーを組んでいた人はそうそういない。僕は選手時代のすごさを知っている。南海のときに「緻密なノムラ野球」を教わったからこそ阪神のときの「指示の曖昧さ」のギャップが気になった。つまり僕が辞めた原因は、間接的に野村監督ですよ。
野村: 「ベンチがアホやから野球がでけへん」というあれは、ワシのことかよ(笑)。
江本: そうですよ(笑)。「監督」に対して選手はすごく期待するわけです。だって監督のサジ加減で自分の年俸ひいては生活が変わるから。そうすると、その監督が持っているレベルが自分の基準より高くないと困るわけです。(編集部註/81年甲子園球場でのヤクルト戦、8回2点差、一打同点のピンチでダグアウトを見たら、監督の姿がなく、指示を確認できなかったのが江本の怒りの原因だった)
捕手にしても法大の1年先輩で仲がよかった田淵幸一さんが阪神にいました。捕球もうまい、強肩で二塁送球も楽々アウトにする。天才型の捕手です。だけど、サインは「投げたい球を投げさせる」投手任せ。つまり、捕手が一応「ストレート」のサインを出して、投手に異論がなければ、そのままストレート。
ということは、打者が何を狙っているとか、クセがどうだとか、そういうことは一切関係ない。サインは「グー」「チョキ」「パー」の3つだけ。南海から異次元の世界に来たようでした。
トレードで一緒に阪神に移籍した島野育夫さんと2人で話したんです。
「このチームで優勝したり、強くしたりするのは相当時間がかかるな。いや、これで去年(75年)3位だったんだから、ある意味、強いのかもしれない」
島野さんだって、ノムラ野球を星野仙一さんの元で実践して、参謀として3度も星野さんを優勝させているわけだから(88年中日、99年中日、03年阪神)。『ノムラ野球のDNA』はいろいろなところで息づいているんですよ。
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