公取も動いた銀行APIの今後 神田潤一氏に聞く(2/2 ページ)
いったんの節目を迎えた銀行オープンAPI。しかし4月に公正取引委員会は「取引上の地位が優越する銀行が、契約の見直しを行い、電子決済等代行事業者に正常な商慣行に照らして不当に不利益を与える場合には、独占禁止法上問題となるおそれ」というレポートを発表した。銀行APIの今後はどうなるのか?
4月に出た公正取引委員会のレポート
――銀行オープンAPIでは、海外とは異なり、有償・無償の定めなどがなかったこともあり、銀行によってかなりスタンスが違う実装となった。利用費用については現在も混乱がある。
神田 「4月21日に、公正取引委員会が発表したレポートでは、オープンAPI推進の際に、価格水準やデータの取り扱いにおいて、優越的地位の乱用につながったり、競争促進につながらないのではないかという指摘があった。これは、金融業界にとってはショックだのではないか」
「(費用について当時)議論のテーマに挙げるかどうかをディスカッションした時期もあった。しかし利用する事業者側は、これまで無償でスクレイピングできたので無償を期待する。一方で銀行側はコストをかけて導入するし、銀行がデータを提供するのに無償はないだろうと考える。最初からかみ合わないことは見えていて、これを調整するのは時間がかかる。スピード感をもって進めるために、そこには目をつぶった」
「ただし、(事業者側としての)この1年間を考えると、何らかの目安は入れるべきだったと思う。『ユーザーが受け入れ可能な、価値を感じられて対価が妥当と感じられる価格で締結するのが望ましい』というような目安だ。システムの開発ベンダーが想定したセキュリティー水準と、ユーザーが求める水準に開きもあった」
――口座データを取得できる参照系APIについては普及が始まった。一方で、新たなサービスの実現に結びつく、送金などの操作が可能な更新系APIについては道筋が見えていない。
神田 「一つは、制度の趣旨の理解や競争促進という、公正取引委員会の指摘した点に沿って、取り組みが進んでいく流れになる。全銀ネットのあり方についても議論が始まった。公正取引委員会のレポートを意識したテーマ設定になっている」
「参照系APIのユースケースは明確にあった。一方で、更新系APIは、それを実現していくときのセキュリティや、何かあったときの損失をどうするのかなど、お金が動くとなると考慮する事項がたくさんある。明確なソリューションと、ユースケースがまだはっきり出てきていない。一足飛びに更新系に進めるよりも、参照系APIを使ってもっといろいろなサービスを広げていくほうが、現実的でメリットを感じてもらいやすいアプローチなのかもしれない」
――新型コロナの影響は出ているか。今後の見通しは。
神田 「コロナでスピードが3〜5年早まった。銀行APIは、ぎりぎり(コロナに)間に合った形だ。やっと銀行との目線が合ってきている。お互い厳しいやり取りをする中で、銀行にパートナーとして認めていただいた面もあるのではないか。すべての銀行ではないが、APIを使ってどういうサービスをやるかという相談が出始めている。最初は制度対応としてやっていた銀行でも、せっかくコストをかけて整備したのであれば、ユーザーがオンラインに移行していく中でこれを使わない手はないと考えているのではないか」
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