2015年7月27日以前の記事
検索
連載

コロナが浮かび上がらせた論点、「ベーシックインカム導入」が難しい真の事情 ――企業は収益力を強化せよ中島厚志がアフターコロナを見通す【後編】(3/3 ページ)

経済産業研究所前理事長で現在、新潟県立大学の中島厚志教授へのインタビュー。後編の今回は、中島教授が長年滞在したフランスの状況を中心に、ベーシックインカムや企業の収益性など、世界の動きを踏まえながら日本はどのような針路を取るべきかを聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

付加価値と収益力

――コロナのような危機が起こったときに収益力を上げるためには何が必要なのでしょうか。

 新型コロナでサプライチェーンが寸断されて自動車の生産ができないということがありました。いざというときのために、国内に生産拠点を設けることも必要で、それが日本企業の強みにつながるということが分かったと思います。ただ、これはコスト高になるわけですから、国内回帰と収益力の向上はワンセットであるべきなのです。

 当然、企業はBCP(事業継続計画)対策を経営のなかに入れなければなりません。それは単にBCPの規定を策定するだけではなくて、収益力を向上させるための策も同時に考えるということなのです。オフィススペースを削減してテレワークを進める、クラウドで経理や総務の負担を減らす。こうしたことに平時から取り組んでいれば収益性は当然高まり、それがいざというときの備えすなわちBCPにつながるのです。

――製造業の現場はどうしても3密になるところがあります。テレワークとのバランスはどう考えればいいのでしょうか? 

 もちろんテレワークが難しい業態もあるでしょう。ただ3密を避けることで確実に言えるのは、今までほどの3密を前提にした大量生産、大量消費の時代は終わったということです。付加価値のある多様なものを作っていく方向にもっと舵を切るべきでしょう。

 技術集約的な展開を製造業でもしていた米国企業に比べると、これまでの日本企業は安い「人手」に頼ってきました。だから労働力の安い中国に積極的に進出したとも言えるのですが、今はそのビジネスモデルをより変えるチャンスです。国内回帰をせざるを得ないならば、より付加価値のある商品を国内の工場で作るしかなく、それは収益力の向上を図ることに他なりません。

――付加価値を付けるというのは、例えばiPhoneのように高価格でも購入するというようなブランド戦略も含まれますか?

 ソフトウェアの比率を高めるような拡張性のある製品を作るということですよね。iPhoneを例にすれば、このスマホの機械自体が良くてアップルが儲かるというより、アプリの魅力でiPhoneの価値が上がっているから儲かっている訳です。日本からそうした「プラットフォーマー」が出てくることを願っています。

photo
アプリの魅力によってiPhoneの価値が上がり、アップルの収益力向上につながっている(写真提供:ロイター)
前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る