資産運用もニューノーマル? ロボアドへの期待と課題(2/2 ページ)
コロナ危機で時間もできて、資産運用にチャレンジしてみようという人が出てきた。しかし、指南役がいないと、もうかる銘柄を見つけて投資したり、上昇相場を期待して投資のタイミングを見計らったりする投資法に回帰してしまう。正統派資産運用に向けてトレンドは変わるか?
分散投資の効果
ロボアドとは、世界各国の株式や債券などの複数の資産に対し、ユーザーのリスク許容度に応じて比率を決めて、自動的に投資してくれるサービスだ。相場の上下変動によって比率が変わったら、自動的に調整するリバランス機能も備えている。
相場が大きく崩れる局面では、資産減少の恐怖から株式などを売り払ってしまう投資家の行動がしばしばみられる。しかし、ロボアド国内最大手のウェルスナビでは、「株価が下がり続けた2月20日から3月23日までの間で、94.8%が利用を継続した」(同社の柴山和久CEO)。この期間、68.2%が積み立てや追加入金を行っている。少なくともロボアド利用者においては、相場の上下動を気にしないという長期投資の概念が浸透しているようだ。
3月末から相場は急反転し大きくリバウンドしたが、ロボアドの特徴である自動リバランスも、ここでプラスに働いた。下がった株式を買い増すことになり、「リバランスによって資産運用益がプラスになるタイミングが早まった」(柴山氏)
ウェルスナビの自動リバランス効果。1月末の段階ではユーザーが97.5%のユーザーが含み益を持っていたが、コロナショック後の3月末にはその比率が2.4%に。しかし、その後のリバウンドによる相場上昇で、6月4日には再び96%が含み益状態になったという(同社資料より)
LINEと組んでロボアドサービスを提供しているフォリオでも、機動的なリバランスがパフォーマンス上昇に寄与した。同社が個人向けに提供しているロボアドの「ROBOPRO」は、AIを用いて経済情勢を分析し、組入資産の比率をダイナミックに変動させる特徴がある(2月10日の記事参照)。
「ROBOPROでは、2月18日の自動リバランスで債券の比率が一気に増えた。そのため、大きく相場が下落するところでは、ダウンサイドを守る(下落を小さくする)ことができた。3月19日にもう一度リバランスがあり、一番大きく下がっていた不動産のETFを買い増している。その結果、株価のリバウンドにもついていくことができた」と、同社CEOの甲斐真一郎氏は話した。
ロボアドの課題
沼田氏が正統派資産運用の担い手として期待するロボアド。しかし、最大の課題は絶対的な利用者が少ないことだ。「(ロボアドのような)正統派はまだまだ日本では普及しておらず、スタート地点にも立てていない」とウェルスナビの柴山氏。日本の個人金融資産は1800兆円といわれているが、つみたてNISAでの運用額は約3000億円、ウエルスナビの預かり資産額も2500億円に到達したばかりだ。
「(本当に必要な人に)届いていない。オンラインだけの提供では顧客が来るまで待っているしかない。ここは課題でありながら、焦っても仕方がない部分」だと、沼田氏は話す。
制度面ではつみたてNISAやiDeCoなど、正統派資産運用を後押しする仕組みが整ってきた。ただし、ロボアド関連ではまだ十分ではない。「確定拠出年金(iDeCo)としてロボアドを提供していいか、制度の条文上不明瞭だ。明確にしてほしいと要望を出している。規制周りの明確化、アップデートを続けてほしい」と柴山氏。また、甲斐氏も「ロボアドとつみたてNISAを組み合わせられるように、理解があるといい」と要望を話した。
ロボアドなど正統派資産運用が根付くかどうか。コロナ禍が続く中、資産運用もニューノーマルとなっていくかの岐路に立っている。
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