もうオフィスは不要なのか、それともまだまだ必要なのか 総務から考えた「結論」:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。いま、急激なテレワーク導入により、一部で「オフィス不要論」が出始めている。中にはコストなどの面から、オフィスを廃止しフルリモートに移行する企業も出てきた。総務業務との結び付きが強いオフィスを巡るテーマを、豊田氏はどう考えているのか?
イノベーションは偶発的な出会いからこそ生まれる?
その理由は、「働き方改革」にある。前回のコラムで、働き方改革のテーマは生産性の向上であり、その生産性の向上とは、効率性の向上と創造性の向上であると記した。この創造性の向上とは、イノベーション創発の可能性を高めることであり、イノベーションが生まれるきっかけこそが、偶発的な出会いの場によるなにげない会話、つまり先に記した、全く意図しないところで起こる、偶発的なコミュニケーションなのである。
「セレンディピティ」という言葉がある。昔でいえばセイロン、今の国名ではスリランカにいた3人の王子が、あるものを見つけるために旅立つ。その道中で、予期せぬ物事に出会い、成長していくという『セレンディップの三人の王子』という物語からきた言葉である。つまり、セレンディピティとは目的とするものを探す途中で、思ってもみなかった宝物に偶然出会うことであり、当然に意図しないところから生じる。
イノベーションが生まれる可能性を高めるために、組織のセレンディピティ能力を高める、そんな言葉もあるくらい、偶発的な出会い、偶発的なコミュニケーションがイノベーションには必要とされているのだ。その結果、総務の現場では、フリーアドレス制を導入したり、コピー機や文房具等の共用品を、わざと1カ所に集め、それを利用しようとする従業員が交わるようにする「マグネットポイント」を作ったり、執務室内に内階段を設置したり、リフレッシュルームに高価なコーヒーマシンを設置して、多くの従業員が利用、結果、他部門の従業員が交わるように仕掛けたり試みている企業も少なくないだろう。
「従業員を衝突させる」、これはある有名外資系企業のオフィスのコンセプトである。この衝突、偶発的な出会いの場の構築、つまりは、創造性の向上をどう実現するかが、withコロナ、そしてafterコロナにおけるリモートコミュニケーションの課題となっているのだ。
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