“悪者扱い”の誤解解く発言も JR東海社長と静岡県知事の「リニアトップ面談」にツッコミを入れる【前編】:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
リニアの静岡工区に関して、JR東海社長と静岡県知事による面談が行われた。この内容を把握するために、進行に沿ってツッコミを入れていきたい。今回は前編。注目は「静岡工区が悪者にされた」という誤解を解く発言と、東海道新幹線「ひかり」への言及だ。
なぜ静岡工区のことばかり発言するのか
[0:10:50] 静岡工区のことばかり発言する理由
金子社長は「なぜ南アルプストンネル(静岡工区)に注目するか」を説明した。最も工期が長い区間だからであり、都市部に比べてアクセスルートが1本だけで効率が悪く、時間がかかるからだ。これは後に川勝知事から出る「なぜ静岡ばかりやり玉に挙げるのか」という疑問に対する答えでもある。
[0:14:35] 「途中までできている」の意味
金子社長は「斜坑を掘らせていただきたい」と発言。斜坑は「トンネル完成後の非常口」か「大井川の水を戻す導水路トンネル」か、その両方か不明だ。いずれにしても「掘る工事」はヤードではなく本体工事の一つだろう。しかも発言の中で「西俣の斜坑は途中までできていますのであと3カ月、千石は場所を決めただけなので、8カ月か9カ月くらいかかる」と発言した。これも分かりにくい。着工を認めていない場所で「途中までできている」とはどういうことか。
実は今回の着工問題は、着工するか否かではなく、工事範囲を広げるか否か、という話だ。県の自然環境保全協定により、5ヘクタール以上の工事は県と事業者が協定を結ぶ必要がある。いままでは5ヘクタールの範囲内で工事をしつつ、県との協定締結を待っていた。この話は面談の後半で出てくる。この面談は初見では理解しにくい。それにしても「ヤードの範囲を広げたい」とすればいいところを「掘る」と言うからややこしくなる。やっぱり掘るつもりではないか、いや、掘っていたのかと不信感を持たれる。静岡県が公開した現場写真では掘っていないようだ。
[0:15:14] ヤードの視察に見解の差
西俣ヤードの視察、進捗確認で両者に認識の違いがある。金子社長は「だいぶ仕上がっている」、川勝知事は「跡形もない」だ。川勝知事は19年6月13日に行ったと言う。しかし20年6月は道路環境が悪くて現地にたどり着けず、県の調査隊からの写真を見ている。その写真を見ると、平地が広がっているだけだ。「跡形もない」は建物もないという意味だろうか。金子社長の「だいぶ仕上がっている」は、整地のみを指しているか。両者の共通見解は「西俣ヤードへ行く道が崩れている」。金子社長は月末(6月末)までに直そうとしているという。
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