“悪者扱い”の誤解解く発言も JR東海社長と静岡県知事の「リニアトップ面談」にツッコミを入れる【前編】:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
リニアの静岡工区に関して、JR東海社長と静岡県知事による面談が行われた。この内容を把握するために、進行に沿ってツッコミを入れていきたい。今回は前編。注目は「静岡工区が悪者にされた」という誤解を解く発言と、東海道新幹線「ひかり」への言及だ。
「静岡県を悪者扱い」の誤解を解く
[0:44:53] 「静岡県を悪者扱い」の誤解を解く
川勝知事から2つ目の率直な疑問が呈された。「他の工区でも遅れており、問題が未解決の地域がある。しかし金子社長は会見などで静岡工区の話ばかりで、まるで静岡県が2027年開業の足を引っ張っているような印象を与えている。他の工区の話はしないから、まるでほかの地区は順調で、静岡だけ1年半も待たせるのかと国交省が動いたと思っている」。
これに関してはもっともな話だ。今回の面談で、川勝知事が最も知りたかったことかもしれない。金子社長から釈明があった。前述の通り、静岡工区が最も難工事であり、工事開始日程が先に来るというだけだ。地上の工事はまだ取り戻せる。トンネルは取り戻せない時期が来た。静岡県のせいにしたわけではない。とても単純な問題だった。
この問答はもっと早く済ませるべきだった。問題のねじれは1年前の金子社長の「静岡工区が着工できず2027年開業が遅れる」と、それに対する川勝知事の「事業計画を金科玉条のごとく押し付けるのは無礼千万だ」から始まっている。これで静岡県側のJR東海に対する疑念が深まった。要するに、双方の言葉遣いの問題にすぎない。
あのとき、すぐにこのようなトップ面談が行われ、誤解を解いていればこじれなかった。あるいは、金子社長が丁寧にスケジュール感も説明すれば良かった。しかし、それをいま指摘しても仕方ない。今回のトップ面談で、トップ同士の素朴な疑問のぶつけ合いが理解を助けることはよくわかったと思う。リニア開通まで何度でも面談を実施すべきだ。
(後編に続く)
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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