「としまえん売却」と「GAFAMの東証一部超え」から見えるコロナ後の世界:専門家のイロメガネ(2/6 ページ)
「としまえん」の売却が今年2月に伝えられた。また1月には時価総額において「GAFAM」が東証一部全体を超えた。さらに、これら2つのニュースが示す新時代への移行は、コロナで一気に加速している。ここでは、リアルな土地から「新大陸の土地」へのビジネス主戦場の移行、コロナによる移行の加速、またコロナ後の世界を見ていきたい。
としまえん売却の衝撃
筆者は中央卸売市場が築地から豊洲へと移転する際、築地市場の跡地について、都心に近くこれだけ広い土地がまとまって出てくる機会は二度とないと記事で書いた。しかし、としまえんの売却によってそれが覆ってしまった。
20年1月、西武ホールディングスは所沢にある西武園ゆうえんちを100億円を投じて全面改装する。そのためにUSJ復活の立役者である森岡毅氏を招へいすると大きく報じられた。翌月には西武ホールディングスが保有するとしまえんを500億円で東京都に売却し、売却資金は西武園遊園地の立て直しに投じるとも伝えられた。
さらに6月、西武鉄道は東京都、練馬区、大手映画会社のワーナー・ブラザーズ日本法人などと、としまえんの売却や跡地の公園としての利用、映画「ハリー・ポッター」を展示するスタジオ建設等について覚書を結んだと報じられている。
練馬区に立地するとしまえんは、都心部というには無理があるが、西武池袋線で池袋に、大江戸線で新宿に直通するきわめて利便性が高い場所にある。広さは築地市場跡地の約23ヘクタールに対して、約22ヘクタールとほぼ同等だ。
西武がこれだけ便利な土地をわずか数百億円で手放す理由は、一見すると不可解だ。超低金利の現在、100億円程度の資金を調達できないわけがない。また土地は、二つとして同じものはない。不動産開発で命といっても過言ではない土地を、しかも開発し尽くされまとまった広さの土地がない都内で放すことは、かつてなら考えられない。
日本の将来では人口減少はすでに確定しているが、首都圏、特に東京は横ばいからかえって増加すると予想されている。地方の人口が減る一方で都心部の人口が増えれば、人口の密集度は現在より高まる。都心部のマンション価格の高騰を見ても需要は極めて高い。
加えて前回の記事「コロナで変わる、桃鉄・シムシティ的な都市開発」でも書いたように、西武グループの歴史は拡大の歴史でもある。
そんな状況で、しかも西武グループが、都内にあるとしまえんを売却してしまう……。西武グループが、かつての拡大路線ではなく堅実経営、現状維持路線を選んでいるようにも見えるが、そこにはまた異なる事情も影響している。それは、インターネットの興隆だ。
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