増えるストレス、見えた希望――コロナショックを機に、働き手の“反乱”が始まる?:パワーバランスの変化で問われる、価値観の刷新(3/5 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、働き手の意識が変わった。テレワークも浸透し、仕事よりも生活を重視する層が増えている。一方、企業の腰は重く、働き手との「意識の差」がどんどん開くかもしれない。このままいけば、抑圧されていた働き手の反乱が始まる可能性がある。
働き手と企業の乖離が広がる
緊急事態宣言解除後、一見すると以前と変わらぬ通勤ラッシュ風景が広がっていますが、先ほどのデータから考えると、乗車している人たちの3分の1以上の意識は「生活を重視」する方向へと変化しています。すし詰め状態で密な環境の中、その人たちが通勤時に受けているストレスは、意識変化前よりもずっと強くなっている可能性があります。
生活重視へと意識変化した人のストレス対象は、通勤ラッシュだけに限りません。固定された勤務時間や定時終了直前の残業要請、休日出勤、形式的で時間ばかりかかる会議、強制的な飲み会参加など、働く環境のあらゆるシーンが新たなストレスのタネになり得ます。そして、そのストレスは働く環境が変わらない限り、どんどん蓄積され続けます。
働き手の意識変化は、今後も細胞が分裂するかのごとくどんどん多種多様に広がっていくと推測されます。ひとえに「生活重視」と言っても、生活の在り方も、重視の仕方も人ぞれぞれ異なるためです。
例えば、家族そろって夕食をとることを重視するようになったAさんの場合、遠距離通勤は避け、定時で帰宅できる環境をより強く望むようになるはずです。小さなお子さんがいて家事も育児も一手に引き受けているBさんは、仮に在宅勤務ができたとしても、緊急事態宣言中のように保育園が休業中だと子どもを預けることができません。そのような時はむしろ、日中は家事と育児に専念し、比較的自由になりやすい夜の時間帯だけ働きたいと考えるかもしれません。年に一度休暇をとって国内外の旅行を楽しんでいたCさんの場合は、休暇先に長期滞在しながら仕事するワーケーションのような働き方が最適かもしれません。
図らずも、コロナショックによって通常勤務の在り方を強制的に変更することとなった2020年は、働き手自身が本当に望む働き方と向き合うことに目覚めた“自分だけのワークスタイル探し”元年だと言えます。
しかしながら、働き手の意識が変化するスピードに対し、社会や企業が提供する職場環境や仕組みの変化スピードは今のところ追い付いていないように見受けられます。このままではむしろ、働き手と企業の意識に差が開く傾向にあると感じます。今の働き方に対するストレスが蓄積すればするほど、その反動として、自分にとってピッタリなワークスタイルを見つけたいという思いは強化されていくことになります。
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