増えるストレス、見えた希望――コロナショックを機に、働き手の“反乱”が始まる?:パワーバランスの変化で問われる、価値観の刷新(4/5 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、働き手の意識が変わった。テレワークも浸透し、仕事よりも生活を重視する層が増えている。一方、企業の腰は重く、働き手との「意識の差」がどんどん開くかもしれない。このままいけば、抑圧されていた働き手の反乱が始まる可能性がある。
働き手の“反乱”が始まる?
総務省の労働力調査によると、20年5月の全就業者数は6656万人。当然のことながら、この6656万人はそれぞれ別の意思を持つ人間です。その人にとっての最適な働き方もまた、それぞれ異なります。
働き方に対するこれまでの価値観は、職場が決めた画一的なルールに働き手側が合わせるべきという考え方でした。それは組織の統制を取る上で合理的である反面、ルールに合わない個々の働き手の希望については押し殺す必要がありました。
通勤ラッシュの中、長い時間をかけて出社する背景には、職場で決められたルールに合わせるのが当然、という暗黙の了解が少なからずあるはずです。そこに疑いを持つことはかえってストレスを増幅させるだけであり、在宅勤務や時差出勤のような“夢の環境”を脳裏に浮かべないように努めることで、なんとか苦行のような毎日を受け入れることができます。
しかし皮肉にも新型コロナウイルスのまん延が、これまでの均衡を打ち砕こうとしています。一時的な緊急避難措置とはいえ、在宅勤務や時差出勤のような“夢の環境”を体感した人が増えたことで、これまでの価値観へ疑いの目を向ける人も増えることになると推察されます。
仮に、通勤に平日片道1時間を費やしていたとしたら、在宅勤務にすることで往復2時間分を家族とともに過ごす時間に充てることができます。その間、子どもと遊んだり、家事にいそしんだり、趣味に興じたりすることができます。年間240日出勤していた人が完全在宅勤務になれば、毎日通勤ラッシュとの格闘に充てられていた苦行のような2時間が、年480時間もそっくりそのまま豊かで幸せな時間へと切り替わるのです。これは、革命的な意識変化をもたらすのに十分な体験だと言えます。
その意識変化は、働き方に対する価値観を根底から覆す要因となりえます。表面的にはこれまでの価値観に合わせながら、働き手は本当に望む働き方のビジョンを明確にイメージして、水面下で転職などの準備を進めることになります。
そのとき、職場側がこれまでの価値観を引きずったまま抑圧的になれば、働き手の不満は増幅し、抑圧された感情は周囲へと広がり、明確なビジョンを持った人材から抜けていくことで、組織の活力も生産性も低下してしまう懸念があります。逆に、個々の希望がかないやすくなる方向に職場環境を転換することができれば、働き手は自発的に今の職場を再選択し、さらに高いコミットメントを携えて力を発揮してくれることが期待されます。
生産年齢人口が減少の一途をたどる中、働き手に選ばれる職場と選ばれない職場との間には、数年後、致命的な差が生じてしまうように思います。
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