コロナ禍で問い合わせ5倍 バーチャル空間で会議・イベント……VRのビジネス活用に再注目(2/2 ページ)
ウィズコロナ/アフターコロナの世界では、VRはビジネスでどのように活用されていくのか。今回、法人向けVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ(ニュートランスビズ)」を提供するSynamonの武井勇樹氏に話を聞いた。
現実ではできないことをバーチャル空間で実現
土木建設業のとある企業では、オンライン会議で図面を画面越しに見てもサイズ感が伝わりづらいという課題があった。そこで、バーチャル上に3キロ×3キロもの広さがある「ラージフィールド」を作り、実際に建造物を作る前に3DCGでレビューできるようにした。バーチャルでは物理的制約がないため、長さ1キロの橋でも原寸サイズでデザインレビューできるようになったという。
KDDIは拠点間のコミュニケーションや在宅ワークの社員との会議などに活用。東京・虎ノ門にあるKDDIのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE(以下、デジタルゲート)」ともコラボレーションしている。現在は新型コロナの影響でオフィスツアーに制限が出ているため、バーチャル空間にデジタルゲートを再現し、バーチャル上でオフィスツアーを実施できるようにした。
また、現実のデジタルゲートにはドローンがあるが、建物内なので飛ばすことができない。そこで、ドローンの動きをシミュレーションし、バーチャル空間でドローンを飛ばすような機能も実現した。
武井氏は「現実の施設に行けないので単純にバーチャルで代替するという側面はありますが、それだけでは弱い」と分析する。直近では展示会やセミナーが開催できないため、バーチャル空間で代替したいというニーズに応えていく。一方、3密の制約がなくなるアフターコロナの世界でもサービスは残り続けることが必要だ。そのためには、現実の代替だけでなく、バーチャルならではの価値をどれだけ多く作っていくかが重要となる。
「現実の枠を超えてバーチャルだからこそできることも提供したいと考えています。バーチャルならではの価値が生まれれば、『ゴーグルをかぶってでもやろう』となるのではないでしょうか」
空間や体験を共有すればコミュニケーションが活性化する
NEUTRANS BIZには6月、ライブ配信機能が追加され、VR機材が手元にないユーザーでもVR空間からのライブ配信をブラウザから視聴できるようになった。ライブ配信中はコメントや「いいね」などのエモーションを発信できるなど、バーチャル空間でも双方向のコミュニケーションが可能な機能を採用した。
武井氏はオンライン会議システムで外部のウェビナーに2日連続で登壇し、その翌日に自社開催のバーチャルセミナーに登壇した。すると、登壇側の負荷が全く違ったという。
「ウェビナー形式の場合、ファシリテーターに話を振ってもらい、ミュート解除して応えてまたミュートをオンにする、この繰り返しです。登壇者同士の掛け合いが難しく、参加者のリアクションが分かりづらいので不安もありました。しかし、バーチャルセミナーなら登壇者同士でお互いの様子を見ながらやりとりができました。登壇者側からしたら圧倒的にやりやすかったです」
オンライン会議システムは音声ベースのコミュニケーションだ。セミナーや会議の場合、画面に発言者もしくは資料を映すだけとなり、ラジオを聞いている感覚に近いものがある。時間とアジェンダを決めて話し合うには向いているが、雑談がごっそり削ぎ落とされてしまう。情報共有には最適だが、空間や体験の共有は難しい。クリエイティビティやコラボレーションが生まれにくい環境だ。
一方、バーチャル空間ならよりリッチなコミュニケーションが可能となる。「今、そこにいる感覚」が共有できるため、参加意識はより高まる。登壇者は顔の向きや身振り手振りがあるため、相手の話に入るタイミングもつかみやすい。武井氏がバーチャルセミナーに登壇したときは、アシスタントが音が割れていることを空間上にカンペのように書いて伝えるなど、テレビの収録に近い感覚で配信できたという。
今、「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」など、バーチャル上でコミュニケーションを楽しむゲームが爆発的人気となっている。武井氏は「みんなで同じ空間や体験を共有することでコミュニケーションが活性化し、仲良くなれるのではないか」と考えている。
「オフィスのよさは、同じ空間を共有し雑談などが生まれることで、組織への愛着が生まれたり、新しいアイデアが生まれたりすることです。空間や体験を共有し、コミュニケーションが活性化すれば、アフターコロナの世界でもビジネスのスピードを落とさずに進められるのではないでしょうか。テレワーク環境においても、現実の空間ならではのリッチなコミュニケーションを実現できる手段がVRです。まだ始まったばかりのVRだかこそ、ユースケースをさまざまな業界、さまざまな企業と作っていけるよう目指しています」
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