東京女子医大で起きた看護師400人の退職危機は「コロナ不況」の先取りである:専門家のイロメガネ(1/5 ページ)
東京女子医大で看護師400人が一斉退職希望という異例の事態が起こった。6月に病院側が突きつけたボーナス全額カットが、その要因だとされている。しかし大量退職危機は、決して「ボーナスゼロ」だけが原因ではない。
7月、東京女子医科大でボーナス不支給により看護師が400名も退職すると大きく報じられた。その後、ボーナスを支給する方向に転じたことで大量退職は回避されそうだという。
勤務する看護師の3割以上が一気に退職しかねない危機にありながら、経営陣は「代わりを採用すれば良い」というスタンスでいたことも火に油を注いだ。そしてこのトラブルはボーナス支給で解一件落着……という程単純な状況ではない。
外出自粛も影響して、全国の病院の6割が赤字、コロナ患者を受け入れた病院は8割が赤字と報じられている(医療関係団体による調査)。
今後も茨の道を歩む可能性が高い多数の病院と東京女子医科大の状況は、コロナ禍で混乱の極みにある全ての業種の雇用と採用について参考や教訓になる部分もある。キャリアコンサルタントである筆者の立場からコロナ禍での採用について考えてみたい。
全国の病院が恒常的な赤字
新型コロナは、多くの病院を赤字化させる大打撃を与えた。全国133の大学病院では、4〜5月で計約313億円の損失(赤字)が出たと報じられている。東京女子医科大病院(東京女子医大)もそのうちの1つで、この4〜5月で30億円の赤字を出していた。
コロナによる赤字転落の要因は、大きく2つある。
- コロナ対策に膨大な手間がかかること
- コロナにより来院数が減少したこと
イレギュラーな患者対応には、平時以上に人件費も設備投資費用もかかり、収益を圧迫する。コロナ環境下では、多少の違和感であれば「不要不急」と通院を控え、外来患者は減る。国からの補助金もあるがこれは減益分の補填(ほてん)には及ばず、コロナの患者が増えるほど、あるいはコロナ対策を講じるほど赤字にならざるを得ない構造だ。
そして前述の通り、これは東京女子医大に限らず全国の病院が同じ問題を抱えている。
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