デジタル時代、顧客の参加で変わる「4P」 ユーザーのハッキングまでも認める「共創」とは?:「新時代」のマーケティング教室(1/5 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
製品政策、価格政策、流通政策、そしてプロモーション政策の4つを、対象となる顧客に合わせて組み合わせるフレームワークをマーケティング・ミックス(4P)と呼ぶ。マーケティング・ミックスは、各要素の組み合わせの論理であるとともに、それぞれの要素が個別の研究領域と結び付きながら独自に発展を遂げてきた。
デジタル時代におけるマーケティングを考えるときも、マーケティング・ミックスは役に立つ。前回紹介したように、デジタル時代におけるマーケティングは「顧客の参加」を大きな特徴とする。マーケティング4.0では、製品政策は共創政策へ、価格政策は通貨政策へ、流通政策は共同活性化政策へ、そしてプロモーション政策はコミュニケーション政策へと形を変えている。まずは共創政策から見ていくことにしよう。
共創政策とは何か
共創(co-creation)は、昨今のマーケティング全体を貫通する大きなキーワードの一つでもある。どんな製品やサービスも顧客に届き、実際に利用されて初めて、その価値が実現されるからである。広くみれば、全ての価値の創造や実現は、企業と顧客によって共創的に起きているといえる。ただ、マーケティング・ミックスでいう共創政策とは、もう少し狭く、あくまで従来の製品政策の発展版として製品開発過程に顧客が参加し、共に創ることを意味する。
具体的には、消費者参加型の製品開発やユーザー参加型の製品開発と呼ばれてきた活動が分かりやすいだろう。すでに古典的な事例ともいえるが、かつてレゴ社は、自分たちが発売したレゴ・マインドストームがユーザーによって勝手に改造されて流通されていることを知り、これを思い切って容認することによって、彼らの支援を得て新しい製品を開発していった。
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