門外不出の「編集マニュアル」には、何が書かれているのか 累計1000万部を売った話:水曜インタビュー劇場(再現性公演)(3/7 ページ)
「本がなかなか売れない」――。耳にタコができるほど聞き飽きた話だろうが、そんな中でもヒットを連発している編集者がいる。アスコムの柿内尚文さんだ。なぜ、彼が担当した本は売れるのか。その秘密に迫ったところ……。
「再現性」に注目
土肥: 「実用書の編集をするんだー」といっても、そのテーマは幅広いですよね。「売れるテーマはこれだ!」といったコツのようなものをつかんだのでしょうか?
柿内: いえ、そういうわけではありません。先ほども申し上げたように、ビジネス書をたくさん読んで「これは使えそう。試してみよう」と思ったことは、実際にやってみました。そして、結果がでてきました。そうしたことを繰り返していくうちに、「再現性」に注目したんですよね。
土肥: 再現性?
柿内: 編集マニュアルのようなものをつくって、それに沿った形で本やムックをつくっていけば、売れる確率が上がるのではないかと考えました。
本で読んだことや人から聞いたこと、自分で考えたことを実際に本づくりに生かして、その中で繰り返し使えるものをノートにまとめて、自分なりのマニュアルをつくったんです。そのマニュアルを見ながら、次の本をつくっていったところ、結果が出てきました。こうしたことを繰り返していくうちに、「やはり再現性があるんだ」と思ったんですよね。
土肥: ほー。ビジネス書を読んでいて「なるほど、なるほど」と思っても、それを実践する人は少ないですよね。多くの人は「この本、面白かったー。さ、仕事、仕事」といった感じで、読んだことに満足する。
柿内: 雑誌はどのようにしてつくられるのか。編集部で次号のテーマを決めて、メンバー全員がそこに向かって取材をし、原稿を書いていく。またはライターさんに原稿を依頼して、編集する。こうして雑誌ができあがるので、メンバー間で情報が共有されやすいんですよね。「このような企画がいいよね」「この仕事はこのように進めたらいいよ」といった感じで。
一方、書籍の編集部はどうか。メンバー間で情報があまり共有されていなかったんです。ということもあって、チカラのある編集者はコンスタントに質の高い本を出し、しかも売れる。逆に、チカラがまだ足りない編集者はなかなかその域まで達することができない。
「じゃあ、編集長が教えればいいじゃないか」と思われたかもしれませんが、編集長もイチ担当者として本をつくっているケースが多い。毎日忙しいので、編集者を育成する時間がなかなかとれない。雑誌をつくってきた人間からすると、そのような構造にモヤモヤしていて、編集長になったときに「なんとかすることができないか」と考えました。
関連記事
- 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 「7畳の学生寮」に住む大学生が増えている、いくつかの理由
首都圏を中心に、「学生寮」がじわじわ増えていることをご存じだろうか。どんな間取りなのか気になって取材したところ、そこはとても「狭く」て……。 - なぜ駅ナカで鼻毛を抜こうと思ったのか 「3分 1000円」の世界
駅ナカで鼻毛脱毛を行っている店が、ちょっと話題になっている。店名は「ekibana(エキバナ)」。3分1000円で鼻毛を抜いてくれるこの店は、どのような特徴があるのか。話を聞いた。 - えっ、盗まれないの? 無人の古本屋は、なぜ営業を続けられるのか
東京の三鷹駅から徒歩15分ほどのところに、無人の古本屋がある。広さ2坪のところに、500冊ほどの本が並んでいるだけ。「誰もいなかったら、本が盗まれるのでは?」と思われたかもしれないが、実際はどうなのか。オーナーに話を聞いたところ……。 - なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.