門外不出の「編集マニュアル」には、何が書かれているのか 累計1000万部を売った話:水曜インタビュー劇場(再現性公演)(5/7 ページ)
「本がなかなか売れない」――。耳にタコができるほど聞き飽きた話だろうが、そんな中でもヒットを連発している編集者がいる。アスコムの柿内尚文さんだ。なぜ、彼が担当した本は売れるのか。その秘密に迫ったところ……。
ヒットに必要な2大要素
土肥: チカラが足りない編集者を成長させて、編集部全体の戦力を上げていく手法だと思うのですが、秘伝の編集マニュアルにはどんなことが書かれているのですか? ちょっと教えてください。
柿内: 例えば、ヒットに必要な2大要素は「新しさ」と「共感」です。この2つのバランスが大切だと思っています。「この本は自分に必要な本だ」と思ってもらうためには、「新しい情報」と「共感できる情報」の両方が必要なんですよね。例えば、新しい情報を自分ゴトにしてもらえるように共感できるエピソードを盛り込む、みたいなことをします。そうした文章に触れると、人は「あ、これは自分が読まなければいけない本だ」と感じるんですよね。
あと、意識しているのは「脳」と「心」、この2つに届けるようにしています。脳と心は同じかもしれませんが、ここでいう脳はロジカルなことで、心は感情のこと。脳ばかりに訴えても、それがすべて届くとは限りません。心で理解することも大切なんです。じゃあ、心で理解するってどういうことかというと、これも共感です。本を読んだ人が「あるある」「そうそう」と思ってくれるかどうか。書いていることがちょっと難しいことであっても、「あるある」「そうそう」と感じることができれば、心に落ちていく。ここがポイントなんです。
土肥: 「あるある」と感じてもらえるように、どのような工夫をしていますか?
柿内: 事例を紹介する場合であれば、仕事、恋愛、レストランなど、誰でも経験していそうな話をバランスよく埋めることを心がけています。仕事をしていない人であれば、仕事の話を紹介しても、なかなか「あるある」と感じてもらえません。ただ、恋愛の話はどうか。たいていの人は一度や二度、恋愛をしていますよね。では、レストランはどうか。ほとんどの人がレストランで食事をしたことがある。このように3つの話を意識して盛り込むようにすれば、読者の脳と心に届けることができるのではないでしょうか。
土肥: 「あるある」と感じられるような仕掛けを、意識して盛り込んでいるわけですね。柿内さんの話を聞いていて、ワタシの脳と心もストーンと落ちてしまいました(笑)。さすが累計1000万部以上売っている人だなあと感じたのですが、その一方でうまくいかなかったこともあったと思うんですよね。そのへんの話も聞かせてください。
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