門外不出の「編集マニュアル」には、何が書かれているのか 累計1000万部を売った話:水曜インタビュー劇場(再現性公演)(6/7 ページ)
「本がなかなか売れない」――。耳にタコができるほど聞き飽きた話だろうが、そんな中でもヒットを連発している編集者がいる。アスコムの柿内尚文さんだ。なぜ、彼が担当した本は売れるのか。その秘密に迫ったところ……。
うまくいかなかった話
柿内: 企画をたてる際に、失敗するケースがあるんです。例えば、第一弾の本がものすごく売れた。そして、第二弾を出すと「あれ、あまり売れない」というケースがあります。なぜ、そうなるのか。第二弾を出すときに、第一弾の成功体験が邪魔するんです。心の中のどこかで「だいたいこんな感じでつくれば、第一弾のように売れるだろう」と思っている。そんな根拠はどこにもないのに、著者も編集者も気分がよくなっていて、「次もこんな感じでいっちゃいましょうか♪」といったノリで話が進んでしまうことがあるんですよね。
本を出すので、内容は悪くない。ただ、読んでいただく人は本当にこの内容を読みたいのか、この内容で脳と心に届くのか、届け方は本当にこれでいいのかといった視点が安易になって、しくじるケースがあるんです。
土肥: では、その勢いで、実際にしくじったケースを教えてください。
柿内: 2016年に『疲れをとりたけりゃ腎臓をもみなさい』という本を出して、30万部売れたんですよね。私が通っている鍼灸院の先生に書いてもらいました。自分自身も患者なので、「先生は本当に人の疲れをとるのが上手」であることを知っている。ということもあって、「なにをすれば人間の疲れをとることができるのか」といった視点で企画をたてていきました。
で、第一弾が売れて、次はどうしたのか。施術を受けていたときに、頭蓋骨をもまれたんですよね。それが本当に気持ちよかった。なぜ頭蓋骨をもまれると気持ちがいいのか、またそのことでカラダのどこに影響しているのか、そうした話を聞き企画をまとめました。そして、17年に『ストレスとりたきゃ頭蓋骨をもみなさい』という本を出しました。
土肥: で、どうだったのですか?
柿内: 第一弾が30万部も売れたので、第二弾の初版は強気の2万部からスタートしました。書店に本が並んだものの、「あれ?」という結果でした。では、なぜ期待通りに売れなかったのか。タイトルに「ストレス」という文言を入れたからかもしれません。本では「疲れ」という言葉は響いても、意外にストレスという言葉は響かない。また、腎臓は体の中でも大切な臓器ですが、頭蓋骨でそのようなイメージを持っている人は少ないのかもしれません。
頭蓋骨に関する本は少ないので、新しさはあると思うのですが、「骨ですよね」と受け止められたのかもしれません。つまり、新しさはあったのですが、共感を生みにくかったのでしょう。
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