本当にAppleは“悪者”なのか 「フォートナイト」開発元の”宣戦布告”に覚える違和感:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
Epic GamesとAppleの争いは、「AppleがUnreal EngineごとEpic Gamesを自社プラットフォームから排除しようとしている」という話が出るほど、拗れてきた。問題の本質は……?
それでも、Epic Gamesの戦いに正義はあるのか?
もっとも「問題はそこではない」と主張したいゲームファンもいるだろう。
アプリの販売ならばまだしも、単なるデジタルデータをゲームにダウンロードさせるだけならば、コストは本当にわずかな金額にしかならない。追加アイテムは配信時にかかるデータ量も少ないため、プラットフォーム側にはほとんどコストが掛からない。それにもかかわらず、一般的なクレジットカード手数料の10倍近いマージンを取り続けるのは不当ではないのか。
しかしながら、Fortniteのような無料で遊べるゲームの場合、追加アイテムなどの売り上げが計上できなくなると、配信プラットフォーム側への収入がゼロになってしまう。通常の買い切り型アプリとの公平性を考えるならば、追加で発生したコストも含めて統一せねばならない。
もっとも、App Store、Google Playともにそのビジネスモデルはメガヒットゲームを基準に作られているわけではない。Fortniteのような最大級のヒット作と、数百円で月に数100本売れる規模のアプリを同列に扱っている部分に、交渉の余地はあるかもしれない。
アプリ調査会社のSensorTowerによると、iPhone向けFortniteは今年7月だけで新たに200万件もダウンロードされ、3400万ドルの売り上げが計上されていた。売り上げが多い月は4000万ドルを超えることもある。仮に4000万ドルならば、1200万ドルがAppleの収入になる。
こうして実際の数字になれば、予想以上の金額になると感じる方もいるかもしれない。あるいはこうしてプレーヤーたちの注目を集めた上で、手数料の妥当性に関する議論に参加してほしいというのが、彼らの本音だろうか。
結末は見えていないが、今回の手法では日本の人口の3倍以上となる3億5000万人を超えるFortniteファンを味方につけるのは難しいのではないか。
すでに注目は集めたのだから、Epic Gamesは次のステップへと踏み出すだろう。舞台は法廷へと進む可能性が高そうだが、オープンな場での議論へとAppleとGoogleを引っ張り出して証言を引き出せれば、そこには業界共通の利益となる道筋が見えてくるかもしれない。
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