「倍返しより転職しろ」「メガバンクは修羅の世界」半沢直樹にはまる中国人の突っ込み:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(6/6 ページ)
TBSドラマ「半沢直樹」の続編が中国でもブームで、中国最大の書籍・ドラマレビューサイトでは、10点満点で9.4点をマーク。「勧善懲悪」の分かりやすさが幅広く人気を集める理由だが、結果として、日本の企業文化に対する衝撃や誤解も視聴者から湧きあがっている。ここでは、中国のSNSやブログで続出している突っ込みと考察を紹介したい。
半沢直樹が転職しないのは「退職金」
半沢直樹に限らず、彼の上司や部下なども含めて、「これだけ辛酸をなめているのになぜやめないのか」というのは多くの中国人が持つ疑問だ。
あるブロガーは、「半沢直樹の場合は嫌でも勤め続ければ数千万円の退職金がもらえ、転職すると退職金が減る」「日本では正社員は滅多なことではクビにならない」の2点を挙げ、「日本人は上司にいじめられても老後のことを考えて社畜に甘んじるが、中国人は事情が違うので、悩んでいる若い人はさっさと転職しろ」と勧めた。
最初に紹介したITエンジニアブロガーも、IT企業の買収案件から感じた日本企業の伸び悩みについて、「終身雇用の弊害ではないか。正社員は失業の心配をせず済むので、イノベーションは生まれず、保守的な考えになる」と分析している。
解説ブロガーたちの知識量には驚くばかりだが、「今は違う」と修正する声もある。今年12月にオープンを予定している上海市の「蔦屋書店」では、8月14日に書籍「半沢直樹」の読書会イベントが開かれた。そこに登壇したゲストの一人は、「日本はバブル崩壊後、終身雇用が揺らぎ、価値観も多様化しているため、日本の若者の転職は珍しくなくなっている」と説明した。
レビューサイトを見ると、「(最初のシリーズが放映された)7年前は50音も読めなかったが、今は留学先の日本からリアルタイムで視聴している」「ずっと続編を待っていた。香川おじさんの出番が楽しみ」「賀来賢人が突然真面目になってて見慣れない」など、コアなファンと見られる書き込みも多い。ドラマの折り返しを迎え、中国でも半沢直樹はさらに盛り上がりそうだ。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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