『半沢直樹』が人気なのは、「パワハラの被害者が増えているから」は本当か:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
ドラマ「半沢直樹」が高視聴率を叩き出している。人気の背景に、「庶民の留飲を下げるような勧善懲悪のストーリーであることが大きい」といった指摘があるが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
あえてみんなの前で「公開処刑」
詳細はぼやかすが、今から十数年前、ある企業から「全社員の前でパワハラを受けたことで精神疾患になったと訴えてくる元社員がいるので、もしマスコミから問い合せがあった際にどのように回答をすればいいのか」といった相談を受けたことがある。
この元社員を仮にA氏としておこう。訴えによれば、在職中にA氏は全社員が参加する朝礼で毎回、役員のB氏から人格を否定するようなことを号泣するまでネチネチと言われ続けたことで、人の前に立つと体が震えて気分が悪くなるようになって、仕事も続けられなくなってしまったという。
と聞くと、「とんでもないパワハラ企業だな」と感じるかもしれないが、会社側の説明はまったく逆だ。このA氏は以前から部下に暴言や威圧的な言動を繰り返し、不正行為のうわさもある「問題社員」だったというのだ。さまざまな被害や苦情が寄せられ、みるにみかねて経営幹部であるB氏が叱責していたというのが、本当のところだというのである。
では、なぜその叱責を個室に呼び出さず、わざわざ朝礼という全社員の前で行ったのかというと、「見せしめ」にしたかったからだ。A氏からの暴言や勝手な立ち振る舞いで、社内のムードがあまりよくなかった。そこで、誰の目にも分かる形で、会社としてA氏を問題視しているメッセージを全社員に伝えたかったというのだ。だから、あえてみんなの前で「公開処刑」にしたというのだ。
つまり、この会社としては、半沢直樹の永田役員ほどではないが、悪いのはあくまでA氏のほうであって、B氏にも会社にもなんの落ち度もないスタンスである。そのため、もしマスコミから問い合せがきたら、A氏がいかに問題社員だったかをしっかりと説明したい、くらいの勢いだった。
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