『半沢直樹』が人気なのは、「パワハラの被害者が増えているから」は本当か:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
ドラマ「半沢直樹」が高視聴率を叩き出している。人気の背景に、「庶民の留飲を下げるような勧善懲悪のストーリーであることが大きい」といった指摘があるが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
やはり「パワハラ」に突き当たる
では、半沢直樹を「世話物」とすると、この演目は日本のサラリーマンのどんな「リアル」をベースにしているのか。「そりゃ、どんな理不尽な目にあっても屈しない企業戦士の強さだろ」「いや、仲間たちとの強い絆だよ」なんていろいろな意見があるだろうが、このドラマでもっとも盛り上がる「ヤマ場」を踏まえれば、やはり「パワハラ」に突き当たる。それを象徴するのが、8月16日放映の第5話で描かれた「悪徳役員の公開処刑」だ。
この回、半沢直樹は再建を目指している帝国航空の社員説明会の場で、同じ銀行から出向している財務担当役員・永田の不正を暴いた。永田はこれまで半沢直樹の邪魔ばかりをしてきた「倍返し」の標的である。
多くの社員の前でこの永田に動かぬ証拠を突きつけた半沢直樹は、「帝国航空にとってもっとも不要なコストは永田、お前だー!」と吠える。いくら不正を働いているとはいえ、なぜ半沢直樹がここまで永田を痛烈にディスったのかというと、実は帝国航空の社員をひとつにまとめる狙いがあったからだ。
この航空会社の中には、自分の持ち場の仕事はしっかりとやるが、会社全体のことは関係ないという空気がまん延していた。このセクショナリズムを壊して、社員ひとりひとりが帝国航空のことを考えるようにさせるため、半沢は永田の不正を利用した。要するに、組織としての士気を上げるために「見せしめ」にしたのである。
「不正を働いた人間なんだからそれくらいやられて自業自得だろ」と思うだろう。だが一方で、そのような「組織のためには悪人を見せしめにするのは許される」という考え方が、日本社会のパワハラを増やしている側面もあるのだ。
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