日本勢の華麗なる反撃 アイサイトX:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
高度運転支援システムにまつわる「考え方」的な諸問題を解決し、使いやすく便利で、なおかつモラル的な逸脱をしっかり抑制したADASへと生まれ変わったのが、今回デビューしたアイサイトXだ。また大袈裟だといわれるのを覚悟して書くが、アイサイトXは、2020年の時点では世界最高のADASだといえるし、少なくとも市販モデルに搭載されたシステムとしては、最も自動運転に近づいたシステムである。
レーダーとGPS
さて、アイサイトはご存じの通り、ステレオカメラによる、距離測定と画像判定によって運転支援を行うシステムだが、アイサイトXではそれに3つの機能が加えられて、システムの対応幅を広げている。スバルが「アイサイトはこれまでもこれからもステレオカメラ」と主張するのは、このベースのアイサイト部分がステレオカメラを軸としたシステムだからだが、アイサイトXの部分に注目すると、それは必ずしもステレオカメラ依存のシステムではない。新たにレーダーとGPS測位システムが追加され、それぞれに大きな役割を果たしているのだ。
第一に、車体四隅にレーダーを設置して、斜め4方向の障害物を検知できるようになった。車線変更系の制御や、前後クロストラフィックでの検知(塀で見通しの悪い路地から鼻先をそろそろと出していく時など)制御などはこれが軸になっている。
次に、GPS地図情報の利用だ。料金所での速度抑制や、コーナーの曲がり率に応じた適正速度への減速はこの地図データとの照合によって可能になった。これを実現するには従来のナビが使っている地図では使い物にならない。ナビの地図は人間に分かりやすいようにデフォルメされており、例えば高速道路のランプなどで実際の道路が2階層になっているような場合でも、横に並べて表記される。その地図データを信じていたのでは、側壁に突っ込んでしまう。だから、航行専用の正確な座標を持った地図が必要であり、アイサイトXはこの専用地図と、衛星による高精度測位によって自車位置を確定している。
例えば軍用技術などでは、こうしたGPSによる高精度測位が基本であり、カメラや熱源センサーのような機能は、最終的な微調整に用いられる。アイサイトXでもこのGPSデータに主として依存する。ただし、ベース階層にはステレオカメラ依存のアイサイトがあり、仮に電波状況などによって測位ができない場合は、アイサイトが最終防衛ラインとして、安全を担保する仕組みになっている。
ということで、追加されたレーダーとGPS測位が技術的な大進歩の根底にあるが、それは同時にステレオカメラシステムの終焉(しゅうえん)を意味しない。
それからもうひとつ重要なポイントがある。アイサイトXが「機械にやらせる覚悟」を持てた理由にはドライバーモニタリングシステムがある。ドライバーが正常な運転状態にあるかどうかをシステムが判断できるようになった結果、ドライバーを信頼して車両制御を行える場面が圧倒的に増えたのである。これまでは、システム側は常にドライバーの脇見や居眠りなどの可能性を操作に織り込まなければならなかったのである。
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