「脱・総菜」がカギ コロナ禍で好調の食品スーパー、乗り越えるべき50年来の“タブー”とは?:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
巣ごもり需要で軒並み好調の食品スーパーだが、今後は「脱・総菜」の取り組みがカギを握りそうだ。そのために必要なものとして、小売・流通アナリストの中井氏は50年来親しまれている食品スーパーのある売り方を挙げる。
巣ごもり消費の恩恵を受けて大きく売上を伸ばしている食品スーパー業界は、7月に入ってもおおむね好調で増収を維持しているようだ。下の表は、月次売上増減率(既存店対前年同月比)を公表している全国の有力食品スーパーの最近の実績値を筆者がまとめたものなのだが、4月以降ほとんどの企業がプラスで推移、企業によっては2けた増収を超える月もあるようで、その好調ぶりは一目瞭然だ。
生活を維持する上で不可欠なインフラであるとのお墨付きを得て、食品を提供し続けた4月、5月の外出自粛の時期は当然として、緊急事態宣言解除後の6月、7月においても、増収ペースを維持している。ウィズコロナ期は、内食回帰を余儀なくされる「新しい生活様式」の下で、こうした状況がしばらく続くのだろう。
ウィズコロナの時期とは、すなわちコロナウイルスに対する有効な対策がない状態なので、医療体制の逼迫状況を見ながら、経済活動のオンオフをコントロールしていくというのが基本的な流れであるという。第2波、第3波の感染の波の大きさによって、公的な行動規制が発動されることもあるだろうし、自己防衛するわれわれの行動にも影響が出てくる。8月に入った今では、全国各地で過去最高の感染確認を更新、とのニュースが飛び交い、風営店や外食店への規制もまた強まっているし、仕事関係での飲食などにも再度、自粛要請がされるようになってきている。こうした波が来るたびに、望むと望まざるにかかわらず、食品スーパー業界への食のインフラとしての貢献が求められ続けるということだ。
食品スーパーの業界団体である全国スーパーマーケット協会の販売統計でも、そうした需要の高まりはデータとして確認することができる。商品別にみると、野菜、魚、肉の生鮮3品を中心にほとんどの商品が前年比プラスを維持するなか、総菜だけが若干減少傾向にあるのが目につく。そういえば、総菜販売の主役であるコンビニエンスストアがコロナ自粛期に大幅に売上が落ち込んでいたのは確かだが、あれは主にテレワークの急速な浸透などで、オフィス街需要が大きく落ち込んだことが原因であって、スーパーの事情とは異なるとされている。
一方スーパーの場合は、主要顧客であるファミリー層が、在宅勤務、自宅学習の流れの中で、まとめ買いした素材を適宜調理することで買い物回数も減らした、という大きな変化があった。確かに、毎日の通勤の途上での買い物が減れば、その日の分の食事に総菜を買いに出掛けるのも手間になる。大きな総菜ユーザーでもある単身高齢者層も、買い物リスクを考えて、その利用頻度を落としたようだ。コロナという異常事態が、総菜というものの使われ方を浮き彫りにしたというのは、ある意味興味深い。
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