「5000円分還元」にとどまらないマイナポイント事業の効果と、真の狙いとは?:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
6月に終了したキャッシュレス還元に続く、マイナポイント事業。登録・利用で1人につき5000円分のポイント還元を受けられるが、それ以上に得られるものがあると筆者は解説する。キャッシュレス政策が持つ真の狙いに迫る。
自分が暮らす横浜の旧市街は、歴史ある商店街がいくつも気を吐いていて、多くの買い物客で賑わっている。緊急事態宣言下では、県内の人出の増減調査の対象となっていた商店街もあるが、自粛期にもかかわらず来街者が増えて困っていたようだ。こうした商店街でも、ふと気付くと、いまやキャッシュレス決済が使えるようになっている。キャッシュレス決済を使うと買い物額の一部をポイント還元するという、キャッシュレス・消費者還元事業は、6月末には終了したのだが、そのかいもあって、個人商店を含め多くの店でキャッシュレス導入が進んだようだ。
還元事業の事務局であるキャッシュレス推進協議会が、「キャッシュレス調査」というアンケートを発表しているが、これによると、キャッシュレス決済が可能な店舗はかなり増え、キャッシュレス決済手段を持つ人の数もある程度増えたようだ。フィンテックに関する事業を展開しているインフキュリオンの調べだと、QRコード決済、電子マネーの利用が急速に広がり、直近期でのアンケート結果では、楽天カード、交通系電子マネー(Suica、PASMOなど)、PayPayが利用率上位となったらしい。自分の周囲でも、PayPay、交通系電子マネーが導入された店は多く、この2つの決済方法を利用することが実感としてもかなり多くなった気がする。
還元事業開始以降、自分も日々の生活の中で、ポイント還元をもらえるなら、なるべく小銭を使わないで暮らしてみよう! とセコい取組みを自ら行ってみたが、キャンペーン後半には確かに、ほとんど小銭を使わないで生活できるようになったような気がする。結果、いまや財布の中には小銭がないことが多く、神社のおさいせんや、スーパーの買物カート(100円玉を挿入しないと使えないようなカート)を利用する際に慌てるといった、くだらない副作用が起こるようになったほどだ。
ただ、もう少し詳しくデータを見ると、楽観的でばかりもいられない。食品スーパーの業界団体である全国スーパーマーケット協会の「スーパーマーケットにおける『キャッシュレス決済に関する実態調査』」によると、キャッシュレス還元事業参加スーパーにおける、買い物時のキャッシュレス利用率は、2019年3月の15.5%から、20年6月は36.7%に大きく伸びたという結果になった。倍増以上という見方もできるが、実際にはあれだけポイント還元がされるのにもかかわらず、6割以上の消費者が依然として現金を使って日常の買い物をしているということになる。日本の消費者の現金志向の強さというべきか、高齢化がこういう結果を生む、と考えるべきか悩むが、ある意味、経済合理性を超越して変化を拒む(ポイントというインセンティブだけでは動かない)、日本の消費者のマーケティングは難しいと、つくづく思う。
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