イスラエルのユニコーン企業オーカム、障害者の“目”になるウェアラブル機器がもたらす未来:メッシ選手がアンバサダーに(1/4 ページ)
視覚障害を持つ人々ができる限り健常者と同じ自立した生活ができるよう、印刷物の文字を読み上げたり、服の色や紙幣の額を識別することができる小さなウェアラブルデバイス、オーカムマイアイ。衝突回避システムの先駆者であるモービルアイの創業者が立ち上げた、イスラエルのユニコーン企業オーカムが作り上げた。
サッカー界のスーパースター、FCバルセロナのリオネル・メッシ選手が、イスラエルのユニコーン企業オーカムテクノロジーズ(以下オーカム)が推進するプロジェクト「OrCam Dream Team」のアンバサダーとなった。
オーカムは、視覚障害を持つ人々ができる限り健常者と同じ自立した生活ができるよう、印刷物の文字を読み上げたり、服の色や紙幣の額を識別することができる小さなウェアラブルデバイス、オーカムマイアイを開発した企業である。
メッシ選手自身、若い時成長ホルモン治療を必要としたことによりユースの契約がなかなかできなかった経験を持ち、可能性を信じ、その障害を乗り越えて夢をかなえた人物としても有名である。オーカムの取り組みと正に一致する経験と理解を持つスーパースターとして、今回メッシ選手がアンバサダーに委嘱されたようだ。
今回のプロジェクトでは、世界中から12人の目の不自由な人々がバルセロナに招待され、メッシ選手と会う機会が提供された。会見では、そのうちの1人の少年のメガネに、メッシ選手がオーカムマイアイ2を直接装着してあげる場面の映像も流された。少年は自分の前にいるのがメッシ選手であることを知らされていなかったようで、マイアイ2が人物認識機能により“リオネル・メッシ”と名前を読み上げると、少年は「びっくりした」と信じられないような顔をしたのが大変印象的であった。
ブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手も招待されており、スペインでメッシ選手と会った時の様子・驚き、そしてマイアイ2を使うことで、自分でできることが増え、それにより自信も持てたことを語っていた。また、メッシ選手もビデオの中で、「視覚障害を持ちながらも、前向きに行動する人々に会えたことは、とても感動的な瞬間でした。アンバサダーとして、目の不自由な方々の生活に変化をもたらすことができることを誇りに思います」とコメントしていた。
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