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興収2500億円超えの映画業界 カンヌに4本の作品を送り出した配給会社社長が語る「コロナ禍の生き残り方」9月19日からイベント開催制限が緩和(3/4 ページ)

新型コロナウイルスの感染拡大は映画業界にも大きな影響を及ぼしている。配給会社ラビットハウスの増田英明社長は「日本では小さな配給会社でも生き残ることができる」と語る。日本の映画業界は毎年2000億円の興行収入を維持していて、小規模な配給会社がそのうちの10%のシェアを奪い合う一定のマーケットがあるからだ。中小の配給会社がコロナ禍をどのように生き抜くのか。増田社長に戦略を聞いた。

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VR作品の製作、「なら国際映画祭」で次世代育成

 とはいえ、小さな配給会社として生き残るために、増田氏は今後の構想を描いている。新型コロナの影響を受ける前から取り組もうと考えていたのが、VR作品の製作だ。VRコンテンツを幅広く制作する講談社VRラボと、共同でプロジェクトを進めている。

 講談社VRラボは、全世界で人気を誇る 『AKIRA(アキラ)』『 攻殻機動隊 』などの大手出版社・講談社と、『トランスフォーマー プライム』『スター・ウォーズ;クローンウォーズ』など世界的な評価が高いデジタルアニメーションを制作しているポリゴン・ピクチュアズが共同出資して17年に設立された。脚本アナリストの資格を持つ増田氏に、講談社VRラボの石丸健二社長から声がかかったという。

 「石丸社長から、海外の映画祭ではすでにVR部門ができていて、想像以上にユニークでオリジナリティのある作品がたくさんあると聞きました。ただVRの没入感、体感、インタラクションを複合的に利用した良質なストーリーテリングがまだまだ少ないので、そのジャンルを開拓していくために映画的な経験値をお借りしたいとお話をいただきました」

 また増田氏は、20年から作品製作と配給以外にも新たな取り組みを始めている。「なら国際映画祭」のエグゼクティブプロデューサーを務める河瀬直美監督から打診を受けて、広報の支援とシネマインターンのインストラクターを務めることになったのだ。

 同映画祭は隔年開催ながら、地方としては規模が大きい。今年は9月18日から22日まで開催し、さまざまなプログラムを展開する。目玉は世界中の若手監督の作品によるインターナショナルコンペティションだ。優秀作品に選ばれると、「NARAtive」と呼ばれる映画制作プロジェクトに企画を提案する権利が得られる。

 「NARAtive」に企画が採用されれば、「なら国際映画祭」のプロデュースによって作品を製作でき、完成後は同映画祭で上映することができる。今年上映が決まっている中国のボンフェイ監督による『再会の奈良』は、前回の同映画祭で選ばれたボンフェイ監督の企画だ。

 映画祭では期間中、東大寺や春日大社、奈良公園などの会場で、招待作品や特別上映、世界の学生映画など50以上の作品が上映されるほか、10代の若者による映画の審査やワークショップなど、次世代の映画人を育てるプログラムもある。増田氏がインストラクターとして担当するシネマインターンは、18歳以下の少年少女5人が、映画の配給や宣伝に挑戦するものだ。

 「映画祭で上映する作品『静かな雨』の宣伝に挑戦してもらっています。フライヤーを作成するところから始めて、作品を紹介してもらえるように、新聞社などにアタックしています。私たち配給会社の仕事と同じことを体験するので意義のある取り組みだと思います」

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「なら国際映画祭」で上映される中国のボンフェイ監督による『再会の奈良』は、前回の同映画祭で選ばれた企画だ(「なら国際映画祭」のWebサイトより)

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