観光列車は“ミッドレンジ価格帯”の時代に? 新登場「WEST EXPRESS 銀河」「36ぷらす3」の戦略:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
JR西日本は夜行観光列車「WEST EXPRESS 銀河」の運行を開始、JR九州も昼行観光列車「36ぷらす3」を運行開始予定だ。それぞれに旅客をひきつける特長がある。価格帯はミッドレンジ。ローエンドの価格の観光列車が多い中、中価格帯の試金石となりそうだ。
観光列車の価格分布はローエンドに偏っている
「WE銀河」は夜行、「36ぷらす3」は組み合わせ自由という新しいアイデアが魅力だ。その上で、「ミッドレンジ」価格帯であることも興味深い。どちらも観光列車群の中では「やや高め」の設定になっている。
観光列車は走行距離も体験時間もそれぞれ異なる。「乗車だけ」「宿泊込みの企画商品」など形態がさまざまで、一概に比較しづらいけれども、まずは鉄道事業者または主催者が用意するプランを並べて「価格帯」に注目する。
現在の観光列車の価格帯は、5000円前後から1万円前後の列車が最も多い。例えば、JR四国で人気の観光列車「伊予灘ものがたり」は最長区間の松山〜八幡浜間を乗車するだけなら2300円で、内訳は運賃1300円、グリーン料金1000円だ。この区間の客単価をほぼ倍にするというだけでも観光列車の付加価値効果である。ここに2600円〜5000円の予約食事メニューを追加して「伊予灘ものがたり」のフルセットとなる。
これより高額になると「プチぜいたくな観光列車」というカテゴリーになる。えちごトキめき鉄道の「雪月花」は1万7500円。JR九州の「或る列車」が2万6000円〜3万8000円、東急の「THE ROYAL EXPRESS(ザ ロイヤル エクスプレス)」が2万6000円〜3万8000円だ。
その次は価格帯が飛躍する。トップクラスで、JR九州「ななつ星in九州」、JR西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、JR東日本「TRAIN SUITE 四季島」という、最低でも30万円台、最高で100万円台級の御三家が控えている。これはもはや観光列車というより「クルーズトレイン」という別格のカテゴリーとして扱うべきかもしれない。
ちなみに「THE ROYAL EXPRESS」は宿泊を組み合わせた企画商品だと15万円前後から25万円前後となる。20年8月と9月にJR北海道で「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」として運行しており、67万円から85万5000円だ。21年も運行予定とのこと。クルーズトレイン御三家と同格だ。
価格帯で観光列車を俯瞰して、1万円以下の観光列車群をローエンド、1万〜5万円をミッドレンジ、5万円以上をハイエンドとすれば、現在のボリュームゾーンはローエンドで、ミッドレンジとハイエンドの品ぞろえは極端に少ない。これは観光列車市場を反映した結果か、あるいは観光列車市場が未熟か、どちらだろうか。
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