“まるっと”しすぎ「デジタル庁」に期待できない理由、それでも期待したい理由:本田雅一の時事想々(1/4 ページ)
「デジタル庁を可能な限り早期に設置する」と自民党総裁選の頃から掲げていた菅義偉首相。果たしてデジタル庁という切り口がどういうものなのか。あまりにも“まるっと”しすぎているようには感じられるが、実効性を持つのかどうか。
政治の話に口を突っ込むつもりは毛頭ないが、そうは言ってもテクノロジー、インターネットは世の中のインフラ。日本という国の運転手が変われば、テクノロジー方面でもさまざまな変化が生まれるのは言うまでもない。
「デジタル庁を可能な限り早期に設置する」と自民党総裁選の頃から掲げていた菅義偉首相は、残り任期が短い中、解散総選挙に向けて動かしていくのだろうから、私たちの生活や仕事、もっと言えば“稼ぎ”にもかかわる社会変革、環境の変化が何かしら起きることだけは間違いないだろう。
果たしてデジタル庁という切り口がどういうものなのか。その名前も含め、あまりにも“まるっと”しすぎているようには感じられるが、デジタル庁というコンセプトが実効性を持つのかどうか、注目すべき点はいくつかある。
日本を“まるっとDX?”
デジタル庁ってどうよ? という話題の前に、そもそもデジタル庁とは? という意識合わせをせねばならない。菅首相の話を総合的に考えるならば、要は日本の行政機関をデジタルトランスフォーメンションするため、省庁をまたいだ改革を行うための組織というところだろうか。
デジタルトランスフォーメーションは「DX」とも略されて、いろんな企業が取り入れているから、多少、ITについて詳しくない読者層でもイメージできるだろう。
例えば今年1月、米ラスベガスの「CES」にはデルタ航空のエド・バスティアンCEOが登場。航空業界を“DXしてきた”ここ数年の成果と今後のプランなどについて話し、コンベンションではどのような取り組みをしているのか大々的な展示を行った。
ネットやアプリを活用し、業務用システム全体の構造だけでなく業務の手順や社内ルールなども含め、大胆にシステムを改良することで“当たり前を当たり前”にすることを目指したデルタ航空の取り組みは拍手喝采を受けた。
属人的でプロセスが見えにくかったゲート変更、到着機材の遅れ、それに伴うさまざまな“行動すべきこと”を、業務システムとエンドユーザー向けアプリを接続し、適切に見せることで解決。今後は到着時間に合わせて移動手段を手配したり、宿泊手配の変更をかけたり、といったところまでDXの範囲を広げようとしていた。
ご存じのように旅行業界は、それどころではない事態に陥っているが、情報システムと業務プロセスを高い視点で見直して、組織の構造から見直せばさまざまなプロセスが可視化され、流れも早くなり効率化する。
既存業務を部分的にIT化をするのではなく、IT化することによる変化を組織の構造から運営まで幅広く最適化することがポイントとなる。
特定企業でのDXはさまざまな事例があるから、ここであらためて紹介するまでもないが、業務改善と顧客体験の改善を同時に行えている例は枚挙にいとまがない。きちんと目標設定を行い、前に進めることができれば日本が変わることは間違いない。
関連記事
- 「DXか死か」を迫られる自治体の現状――RPAへの“幻滅”が示す問題の本質とは?
いま自治体において、デジタルトランスフォーメーション(DX)に注力する先進的な例が見られるようになり、大きな転換期を迎えている。今後10年間、DXに本腰を入れて取り組み続けたか否かで、自治体の明暗ははっきりと分かれることになるだろう。全5回に渡る本連載は、「ITの活用で変わる自治体」をテーマにお送りする。 - DXのために必要なのは「イケてるITシステム」ではない、と言い切れるワケ
新型コロナでテレワークが浸透し、デジタルトランスフォーメーションの機運がこれまで以上に高まっている。高度なITを使い華々しく語られることも多いDXだが、筆者はDXに高度なITは必要でない、と指摘する。 - ジョブ型への移行、オフィス半減 富士通・平松常務に聞く「真のDX企業へと脱皮する要点」
富士通は、グループ会社を含めたオフィススペースを3年間で半減させる。同時にこれまでの年功序列型から、業務内容を明確に定めた「ジョブ型雇用」に移行させる。デジタルトランスフォーメーション(DX)を率先して実行する富士通で今何が起きているのか。同社の総務、人事の責任者を務める平松浩樹常務にインタビューした。 - 足かけ10年の組織変革 コニカミノルタが語る「DX推進」に必要なもの
コニカミノルタは、複合機とITサービスの進化型統合プラットフォーム「Workplace Hub」をDXの一環として展開している。同社で“画像IoT”の技術開発をけん引する江口俊哉氏にDX推進に向けた取り組みを聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.