“まるっと”しすぎ「デジタル庁」に期待できない理由、それでも期待したい理由:本田雅一の時事想々(2/4 ページ)
「デジタル庁を可能な限り早期に設置する」と自民党総裁選の頃から掲げていた菅義偉首相。果たしてデジタル庁という切り口がどういうものなのか。あまりにも“まるっと”しすぎているようには感じられるが、実効性を持つのかどうか。
“まるっとDX”なんて日本じゃできない?
世の中が良くなると感じることに対し、菅首相は思いを寄せて取り組むタイプのようだ。少なくとも携帯電話料金引き下げ議論のプロセスはそうだった。
そんな菅首相が、安倍政権時代に新型コロナウイルス対策でのデジタル行政における目詰まりのような対応の遅さを、なんとかしたいと考えたのは納得できるところだ。官邸主導で行われていた新型コロナウイルス対策で、何らかの政策を実施しようとしても、最終的に行政サービスを受ける国民までの動線は美しく引くことができない。
たかだか……というと語弊があるかもしれないが、各種給付金や雇用調整助成金などをオンライン申請するといった、ごく基本的なプロセスですら不具合が続出した。医療機関との連携など、それぞれに細かく掘り下げれば原因を切り分けることはできるだろうが、問題は行政機関のITシステムや担当がぶつ切りで、組織の縦割り構造がそのままITシステムの問題として放置(というよりも、見て見ぬふりだろうか)されていたことにある。
国単位でさえそうなのだから、当然、地方行政と滑らかに連携し、末端の国民に対して流れるように美しく連携するサービスなど期待しようがない。
日本のICT行政はよく「遅れている」と表現されることが多く、官僚たちの意識の低さも問題になる。台湾との比較なども散々、コロナ禍の中でされてきたが、では本当に“訳の分からない奴ら”といえるのかといえば、実は各省庁の担当者、特に若い世代は問題意識や現状の認識は決して間違ってはいない。
彼らの意識はそれなりに高いのに、ではなぜうまくいかないのか。
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