コロナ時代をどう戦う? IKEA、ニトリ、無印、それぞれの戦略:巣ごもり需要で好調(1/5 ページ)
IKEA、ニトリ、無印良品は巣ごもり需要で好調だった。家具・インテリア雑貨を扱ってはいるが、それぞれの戦略は大きく異なる。コロナ時代をどう戦おうとしているのか。
コロナ時代の小売業はどうあるべきか。コロナ前の常識は捨て、Withコロナで生き残る企業になるためのシフトチェンジが求められています。それは、コロナ下で売り上げを大きく伸ばした企業にも当てはまります。巣ごもり消費によって、家の中で使用する商品の需要が高まりました。
自宅のテレワーク環境を整えるためのオフィスワーク家具や、家の中を整理する収納家具がよく売れました。また、家事をする機会も増えたのでキッチン雑貨などのリビング系商品も好調でした。
その恩恵を受けたのが家具・インテリア雑貨を扱うIKEA、ニトリ、無印良品(運営会社は良品計画)です。しかし9月に入って状況は落ち着きつつあります。ここまで好調を維持してきた3社。同業のように見られていますが、各社の考え方、経営方針、ビジネスフォーマットは全く異なります。巣ごもり消費が沈静化していく中で、各社はどのような戦略で勝負しようとしているのか。どこが勝ち続けるのか。流通小売り・サービス業のコンサルティングを約30年続けてきたムガマエ株式会社代表の経営コンサルタント、岩崎剛幸がマーケティングの視点から分析していきます。
増収増益を続けるニトリ
2020年度の期末着地予想を開示した企業(上場企業全体の66%が該当)が予想する当期利益予想の合計額は、18年と比較すると半減の見込みで、売上高は前期比1割減という状況でした(20年8月7日時点、出所:「上場企業の純利益36%減、減収減益6割 21年3月期予想」日本経済新聞電子版8月10日付)。
この調査結果によれば、 今期「増収増益」を見込む企業は全体の2割程度。このうち、小売業では前回の記事で紹介した西松屋と、今回紹介するニトリが該当していました。ニトリは西松屋に勝るとも劣らない好業績が続いている企業です。
緊急事態宣言の影響を一時期は受けながらも微減に止め、20年6月からは売上高、客数共に二桁増を続けています。8月までの半期累計で営業利益は前期比1.4倍。巣ごもり特需があったとはいえ、他に類を見ないほどの高い実績をあげています。実はこれはニトリだけでなく、無印良品(以下、無印)にも見られる傾向です。
全国の商業施設に多くテナント出店している無印は、5月までは大きく売り上げを落としました。しかし、6月以降はニトリと同様、売り上げ、客数を二桁伸ばしています。ニトリ程ではありませんが、他の小売業がうらやむ伸び方をしています。
月次数字は公開していませんが、これはIKEAでも見られる傾向です。郊外型でかつ超大型店でもあるIKEAは、その店舗特性を生かして顧客の支持を集めています。
この3社はいずれもが同じような店舗展開で同じように業績を伸ばしているように見えますが、経営内容の実態は異なります。
ニトリは絶好調で今期数十店舗以上の出店を加速し、現在の店舗フォーマットにさらに磨き込みをかける高収益型経営を志向しています。
無印は世界では苦戦しています。米国のMUJI USAはチャプター11に基づく再生手続きを開始。良品計画は、20年8月期業績では29億円の経常赤字を予想しています。
IKEAはグローバルではダントツの好業績であり、今後は都心を中心とした新業態開発に力を入れています。巣ごもり消費の勢いがなくなり始めるここからが、各社の本当の姿が見えてくる時期です。それでは各社の戦略の違いを見ていきましょう。
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