投資は、お金もうけか社会貢献か? ESG投資の可能性(3/3 ページ)
株式投資といえばお金を増やすためにすること――。そんな考え方が、徐々に変わってきているかもしれない。社会に貢献している企業の株式を買うことで、応援し、世の中をよくしていく一歩にしたい。そんな目的の投資スタイルが生まれていく可能性がある。
なぜ株を買うことが企業の応援になるのか
また企業の株を買うことは、企業のオーナーとなることでもあり、重要な決定に対して一票を投じることができる。「株式を買うことはその会社を持つことになる。その会社が悪いことをする決断がされそうなときに、議決権を持つことで予防もできる。会社の正しい決定を促していくことになる」(大槻氏)
そうはいっても個人株主が持てる株式数には限界がある。結局のところ、資本の論理で大株主の意向以外は反映されないのではないか? 大槻氏は、個人株主からの株主提案が、会社の定款を動かす場合もあると話す。
みずほFGの株主総会では、剰余金の配当権限を取締役会から株主総会に移せという株主提案が繰り返し出されてきた。定款変更に必要な3分の2には届かないものの、毎回半数近くの株主が賛成しており、ついに20年6月の株主総会で定款が変更となった。会社側からの自主的な変更提案だったが、これは会社側が折れたという見方が強い。
利益の追求から、社会貢献を兼ね合わせた投資へ
リターンだけの追求から社会貢献も兼ね合わせた投資は、機関投資家の間では一般的になってきている。一方で、個人投資家はESGなどの観点から投資を行うのはまだ難しい。
ESGなど社会に役立つ要素を元に企業を選ぼうと思っても、統一されたスコアはなく、また企業ごとのESG評価を掲載している証券会社もほとんどないからだ。環境や社会への取り組みを判断するには、各企業のWebサイトなどから個別に情報を入手する必要がある。
7月に日銀が発表したレポートでは、ESG評価の透明性がないことや、各企業にESG要素の開示が義務化されていないこと、企業が公開するESG情報が少ないことなどが指摘されている。
ESG投資を行う投資信託などは、それぞれ個別にESG格付け機関と契約して情報を入手していたり、独自にESG評価をしたりしている。個人が本当に社会貢献の観点で投資を行っていくには、財務諸表だけでなく、ESG評価などへのアクセスが容易になることも必要になっていくだろう。
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