議決権行使にブロックチェーンを使う2つの理由 bitFlyerが株主総会で利用
オンラインでの会議は一般的になってきたが、意思決定のための投票の仕組みはまだ開発途上だ。bitFlyer Blockchainが開発したブロックチェーンを使った投票システムを使い、株主総会の議決権行使が実施された。
コロナ禍真っ最中となる2020年の株主総会は、オンラインでの実施が増加している。しかし実行にあたっては対面開催と同様に、質問と議決権行使の手段を用意する必要があるなど、ハードルも高い。
6月26日、仮想通貨取引所を営むbitFlyerの持株会社、bitFlyerホールディングスは株主総会を実施し、ブロックチェーン技術を使ったアプリ「bVote」を用いた議決権行使を行った。グループのbitFlyer Blockchainが開発したもので、議決権行使の内容を独自開発のブロックチェーンmiyabiに記録する。
スマホのアプリを起動し、マイナンバーカードをスマホの読み取り機能で読み込む。マイナンバーの暗証番号を入力することで、マイナンバーカードから氏名などの情報を取得する形だ(マンナンバー自体は読み込まれない)。その後、アプリから投票を行い、結果をブロックチェーンに暗号化して記録する。投票者のなりすましの防止と、投票結果の改ざん防止の両方を実現する。
これまでも議決権の事前行使はオンラインで行えることが多かった。今回それをブロックチェーンに記録することで、どんなメリットがあるのだろうか。bitFlyer Blockchainの加納裕三社長は、改ざん防止と透明性の確保の2点を挙げた。
「改ざん不能なだけでなく、透明性を保証できる。投票の集計開票作業は会社側が行うが、しばしば株主と会社側の利害は対立するからだ」(加納氏)
bVoteが投票結果を書き込むブロックチェーンはプライベート・ブロックチェーンだが、外部から閲覧できるようにも設定できる。誰がどんな投票を行ったかは暗号化されており、改ざんはできないため、会社側が集計結果を操作することはできない。
今回のbitFlyerホールディングスの臨時株主総会も、Zoomを使いオンラインで行われたが、質疑応答の後、リアルタイムで投票と集計ができるのも強みだ。総会に参加した株主の一人であるインキュベイトファンドの柳瀬博史氏は「アプリのダウンロードから投票までの一連の流れが、あっという間に完結した。類似のサービスに比べてブロックチェーンを使っており、改ざん防止について保証されている」と評価した。
今後、他社の株主総会でも利用できるよう、外販も検討していく。また、将来的にはさまざまな会議体や各種選挙への適用を見据えているという。リモートワークの普及により、会議自体のオンライン化は一般的になってきたが、意思決定会議においてはbVoteのような透明性があり改ざんが防止できる仕組みが重要になっていきそうだ。
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