新型コロナで悲鳴あげる都心の飲食店 存続の道を探る六本木の老舗ジャズクラブ:Go To Eatできない(2/3 ページ)
新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、8月の外食全体の売り上げは前年比84%と7月よりも低下し、回復傾向は頭打ちに――。中でもパブ・ビアホールと居酒屋は、東京都などの自治体が飲酒を伴う業態に営業時間短縮を要請したことで、4月以降壊滅的な状況が続いている。
老舗の名店が消えていく中で
「alfie」が日本を代表する老舗ジャズクラブといわれる理由は、40年という歴史だけではない。日野さんの亡き夫は、ジャズドラマーの日野元彦さん。元彦さんが「alfie」に客として通うようになって、のちに結婚。元彦さんの兄のジャズトランペッター、日野皓正さんも店を訪れて演奏するようになった。
容子さんは元彦さんとともに、「alfie」で有名ミュージシャンのライブを企画すると同時に、若いミュージシャンにも演奏の機会を作ってきた。「alfie」で育ったミュージシャンは、ピアニストの大西順子さんや国府弘子さん、歌手のマリーンさんなど多数いる。もともと店内での演奏はピアノとボーカルが中心だったが、元彦さんと出会ったことで、ドラムなども入れるようになったという。
元彦さんは1999年に亡くなった。命日の5月13日には、毎年皓正さんによるライブが行われ、店内は毎年、超満員になる。しかし、今年は休業要請で店を閉めていたことと、皓正さん自身も米国から動けないことから開催は見送り。さらに、40周年を迎える5月20日を中心に多く企画していた記念ライブも、全てキャンセルになった。
「せっかくいろいろなイベントを組んでいたのに、開催できなくて残念です。生きているうちにこんな経験をするとは思いませんでした。お兄さんも、ライブやフェスティバルが全てキャンセルになっていると聞いています。早く元通りになるといいですけど……」
新型コロナの感染が再拡大したことで、店を開けてもミュージシャンが怖がって、ライブができない日も多かったという。しかし、容子さんが歳を重ね、店がコロナの影響を受けているとあって、心配してかけつけてライブを開催するミュージシャンも多い。9月15日に「alfie」に出演した、ピアニストの丈青さんもその一人だ。
丈青さんは、ジャズバンド・SOIL&"PIMP"SESSIONSのキーボーディストであり、ピアノトリオ・J.A.Mのリーダーも務める。この日は秋田ゴールドマンさんと、江藤良人さんとステージに上がった。ソロピアニストとしてもさまざまなジャンルで活躍する丈青さんは、「alfie」で育ててもらった恩は忘れないと語る。
「この店はミュージシャンにとっても、お客さんにとっても大事な場所です。僕たちはまだ無名だった頃から容子さんに目をかけてもらって、演奏させてもらっています。あってはいけないことですが、当時は僕たちのライブにお客さんが入らない時もありました。お店は赤字だったと思いますが、それでもきちんとギャラを払っていただいていました。
この店は来日した世界的なプレイヤーが、ビルボードライブやブルーノート東京で演奏した後にやってきて、セッションする場でもあります。僕も一緒に演奏しました。そういう国際的な交流の場になっているんですね。日本の文化が世界のレベルと交流する場所なので、そういう場所を絶対に無くさないようにしたいと思っています」
老舗の廃業も相次ぐ
コロナ禍では、飲食店を中心に老舗の廃業も相次いでいる。東京商工リサーチが調査した「休廃業・解散した企業の代表者の年代別構成比」では、2019年の最多は70代で39%。60代以上に広げると全体の83.5%を占めていた。そこに新型コロナの影響が襲った。
老舗を守るには、経営者の努力だけでは難しいところもある。「alfie」では、学生起業家でJazz2.0(東京・港)社長の濱田真秀さんが協力を買って出て、クラウドファウンディングを始めた。「alfie」を未来に残したいと、日野皓正さんら多くのアーティストがメッセージを寄せている。9月29日現在で、350万円を超える支援が集まった。
容子さん自身も新たな取り組みに挑戦している。毎月1回、日曜日の午後にコーヒーとジャズを楽しむイベント「豆と音」を開催。それ以外の昼の時間帯にも、音響が使えるイベントスペースとしての貸し出しを始めている。夜のライブも以前のように開催できるようになった。まだ客の入りは元通りとはいえないが、容子さんは何とかして店を続けようと前向きになっている。
「コーヒーのイベント以外にも、ワインや日本酒を飲みながら、ジャズを楽しむイベントも企画してみたいですね。もともとは洋服のデザイナーを志して、この店を始める前はアパレルの会社にいましたから、alfieブランドのグッズなども作りたいです。
クラウドファンディングで頂いたお金は、お店のためと、ミュージシャンを育てるために使わせていただきたいです。店があれば、まずは演奏できますよね。潰れる時は潰れるだろうけど、今は頑張らないと。やっぱり気持ちを明るくしないとね」
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