2015年7月27日以前の記事
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「鬼滅の刃」などに沸いたアニメ制作業界 19年の市場規模は過去最高を更新 20年は新型コロナの影響も伸び率は減速 成長に急ブレーキ

帝国データバンクが発表したアニメ制作業界の動向調査によると、2019年の市場規模は2427億4900万円で過去最高を更新。一方、伸び率では0.5%の増加にとどまり、増加率としては11年以降で過去最低を記録。

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 テレビアニメ「鬼滅の刃」や、新海誠監督の「天気の子」など、ヒット作に恵まれたアニメ業界。帝国データバンクが発表したアニメ制作業界の動向調査によると、2019年(1〜12月期決算)の市場規模(273社の事業者売上高ベース)は2427億4900万円となり、9年連続で過去最高を更新した。

 一方、前年からの伸び率は0.5%の増加にとどまり、増加率は11年以降で過去最低を記録。2010年代に入りアニメ制作業界では急速に事業内容や規模の拡大が続いたが、19年は成長ペースが急減速した。


大ヒットの「鬼滅の刃」(出所:プレスリリース)

 1社あたりの平均売上高は8億9900万円(前年比4.2%増)で、ピーク時(07年、約10億円)の約9割となった。前年比で「増収」となった企業は38.0%を占め、「減収」(22.4%)を大きく上回った。損益面では「増益」の構成比は52.2%だった。18年(48.8%)を上回ったほか、2年連続で前年から増加した。

 各社ともアニメ作品を中心に制作量を確保し、劇場版アニメも好調だった。また、アニメ制作に多額の費用がかかる点が認知され、適切な制作費を交渉し、単価引き上げを確保できたケースが出始めたほか、中国など海外の動画配信大手からの大型案件受注などで、大幅に業績を向上させた企業もあり、業界全体の底上げにもつながった。

 しかし、人件費や最新設備などへの設備投資負担、外注量の増大によるコストの上昇が多くの企業でみられ、利益面での押し下げ要因となった。


国内アニメ制作市場(出典:帝国データバンク)

 制作態様別にみると、下請けとなる専門スタジオでは平均売上高が3億3700万円(同5.8%増)で、3年連続で増加した。「赤字」は17.2%で、過去10年間で2番目に低い水準となった。

 総じて受注量が多く、人材の採用や育成の効果として自社の受注消化能力が向上し、売り上げが増加した企業も多くみられた。ただ、受注増に対応するため、アニメーターの積極採用や外注増加などがみられるほか、設備投資によるコスト負担増がみられる。一方で、利幅の厚い案件の選別傾向がみられ始めているほか、デジタル化の進展に伴い、絵コンテやレイアウト用紙の経費削減が可能になり増益を確保したケースもあった。


業態別の業績動向・内訳(出典:帝国データバンク)

 また、19年の倒産・休廃業・解散社数では、倒産が2社、休廃業・解散が1社の計3社で、過去最多の18年(計12社)から大きく減少した。人件費の高騰や、下請け業者などへの支払い費用増大で採算割れが常態化し、資金繰りが行き詰まったケースが多い。近年では、所属するアニメーターへの報酬未払い・遅延などが頻発した末に倒産した制作会社が目立っているという。


アニメ制作企業の倒産・休廃業・解散推移(出典:帝国データバンク)

 現在アニメ制作業界でも新型コロナウイルス感染防止対策として、原画作業やアフレコなどをテレワークに切り替える動きが進んでいる。しかし、制作スケジュールの遅延による新作アニメの放映延期や、コストアップといった副作用も発生しているという。20年のアニメ制作市場は拡大傾向から一転して、10年ぶりの規模縮小となる可能性もあり、引き続き動向が注視される。

 調査は、帝国データバンクがアニメ制作企業273社を対象に実施した。

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