「広場=にぎわい」は古い? 神田のオフィスビルで生まれた新しい空間の仕掛け:アフターコロナ 仕事はこう変わる(4/4 ページ)
東京・神田で開業したオフィスビル「KANDA SQUARE(神田スクエア)」。仕事もできる開放的なパブリックスペースが特長の一つだ。設計した日建設計の提案は、アフターコロナの働く場を考える上でも参考になる。今後のオフィスの在り方について聞いた。
コロナ禍を経て大きく変わる「オフィスの役割」
現実味を帯びてきた本社オフィス空洞化の課題に対して、勝矢氏は「オフィスの役割は、個人労働の場から“人をつなぐ場”へと変わりつつある」と語る。会社の規模によっては、オフィスがなくてもオンラインでつながれるケースもあるだろう。しかし、ある程度の規模がある企業であれば、完全なオンライン化は難しい。「本社オフィスは残り続けていくのではないか」と勝矢氏は見る。
そしてその役割は、デスクワークを中心とした作業の場から、「クリエーション(創造)」「つながり」「ビジョン共有」の場という意味合いが強くなってくる。勝矢氏は「やはり全体の帰属意識は重要。何のために働いているか分からなくなると、生産性低下につながりかねない。そのためのオフィスとして、どんな形であるべきか、顧客と一緒に考えていく」と強調する。
一方、オフィスという固定空間に限らず、“どこででも働ける”環境を生かした「ワーカブルウェブ」という形態が広がるのではないかという分析もしている。つながりの場としての本社オフィス、作業空間の自宅やカフェ、出会いや情報交換の機会もあるシェアオフィス、自宅近くの生活圏にあるサテライトオフィスなど、働く人を取り巻くネットワークの中で、目的に応じて働く場を選べる、という環境だ。街全体から刺激を得てビジネスに生かす、という考え方も珍しくなくなるだろう。
勝矢氏は「これまで固定されていた働く場が分解されることで、それぞれの“場”に必要なものが見えてくる」と話す。特に本社オフィスは、単なる“デスクワークや会議をする場”でなくなれば、企業ごとにその意味合いや必要な設備も変わってくる。NADはこれまでの知見を生かし、以前では考えられないほど幅が広がったオフィスのニーズを捉えながら、新しい空間アイデアの提案に注力していく方針だ。
オフィスを巡る状況が激変し、思い切ってオフィスを縮小した企業もあれば、まだまだ様子を見ている企業も多いだろう。社員のリモートワークや現在のオフィス利用の状況だけでなく、「今後の自社にとって、オフィスをどう使うのが最適か」「そのためにはどんな空間であるべきか」を見極めることが、オフィスを含めた働きやすい環境をつくるために必要になっていきそうだ。
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