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株価が待つ景気回復KAMIYAMA Reports(2/2 ページ)

足元、コロナ・ショックの混乱期(2020年3月から6月)に世界のエコノミストが想定した経済回復シナリオに沿って、米国の経済回復は順調に進んでいるといえる。米国を含む主要国で新型コロナウイルスの感染者が再度増加しているにもかかわらず、当初の医療崩壊懸念を含む混乱はおおむね避けられ、注目は経済回復の進度に向かっている。

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世界経済の拡大:米国の輸入、日本の輸出

 世界の最終需要を支える先進国の中で、米国ではモノの輸入超過が続いている。つまり、米国の経済回復は米国の輸入、ひいては日本、ドイツ、中国などの輸出によって世界に波及することになる。

 米国の輸入は、2014年から18年ごろにかけて、2200億米ドルから2400億米ドルで推移していたが、トランプ大統領就任ごろから急上昇し、その後米国の消費の成長の一段落とともに2600億米ドル程度となり緩やかになっていた。そのころ米国は中国への関税を引き上げたが、輸入額はさほど減らなかった。コロナ・ショックで、輸入額は一時的に大幅に減少したが、消費の回復とともにすぐに回復し、8月時点では2400億米ドルと、2018年ごろの水準にまで回復している。


米国輸入額の推移(季節要因調整)

 米国の消費・輸入の回復は、当然のことながら日本の輸出と表裏一体といえる。日本からの輸出の仕向け先は米国だけではないが、米国の需要回復は、アジア諸国等さまざまな製造拠点から製品を輸出し、日本からはその拠点に機械や部品などの輸出を伸ばすことになる。

 日本の実質輸出(為替の影響を除く輸出金額、おおむね輸出の数量と考えられる)は、2009年以降のリーマン・ショックからの回復時に比べ、数カ月で急速に回復していることがわかる。コロナ・ショックによる輸出下落は、かなりの程度元に戻っている。


日本実質輸出の推移(季節要因調整)

株価は経済の回復を待つ

 結論として、現在の日米の株価指数は、経済実体に対して高すぎるというよりも、先に上昇して、経済回復を待っている状態にあるとみている。


米国の主要株価指数推移

 米国の製造業が比較的多く占めているNYダウ工業株30種平均は、いわゆるGAFA銘柄の比率が少ないため、S&P 500ほど回復してないが、コロナ・ショック前の2万9000米ドル程度から1万9000米ドル程度までいったん下落した後、6月ごろまでに2万6000米ドルに回復、現時点では2万8000米ドル程度まで回復している。

 4−6月ごろから主要なエコノミストなどが想定していた経済回復シナリオは、4−6月期に大幅な悪化、7−9月期から急激な回復、その後は緩やかな回復、というものだった。現在までの経済指標の回復はそのような想定に沿ったもので、株式市場はそれを好感して今後の回復を多少先取りすることは、奇妙なことではない。足元の株式市場は、今後の経済回復のペースがどのくらいになるのかに注目している。

筆者:神山直樹(かみやまなおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。

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