投資からみた米中関係:現状維持予想:KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)
米中の対立は、今後おおむね現状で推移するだろう。一言でいえば、今後、中国と米国の貿易・安全保障における対立が(舌戦などではなく幅広い輸出入制限となって)ますます激化し、両国経済が苦境に陥る可能性は非常に低いとみている。米中の相互依存が緩やかに低下することは、日本やその他の国の企業のチャンスを増やすかもしれない。
貿易と安全保障という二つの問題
米中の対立は、今後おおむね現状で推移するだろう。オバマ政権で中国とある程度友好的な関係を保った時期はあったが、もともと米国は20年以上の長きにわたり中国との不公正や価値観の相違を強調していたこともあり、トランプ政権は、その流れを受けて中国への関税を高くするなどの政策を実行した。
このような方向性は、もともと保護主義的で米国内での生産に前向きな野党民主党でも強まっている。加えて、防衛や軍事を含む安全保障の観点から、米国のテクノロジー技術の移転制限や米国内の人々の行動情報の流出防止を求めるようになってきた。
今後、米中の対立は、貿易と安全保障という二つの問題に分けて考えると良い。貿易問題とは、中国の米国への輸出超過で、安全保障問題とは、中国への米国の技術移転と米国内の基幹産業への中国の通信関連企業などが進出することだ。いずれも共和党であれ民主党であれ、考え方に大きな違いはない。民主党の場合、これに加えて人権問題を強く意識するため、中国による香港民主化に対する抑圧への対応が、共和党よりも敵対的になる恐れがある。
米国と中国とでは異なる反応
米国では、中国との政治的な対立が産業に悪影響を与えることを懸念する。このところ米国株式の上昇をリードしてきたインターネット関連のいわゆるGAFAは、サーバや携帯電話などのハードウエア生産と深くつながっており、その部品の供給元である半導体関連産業とも、中国を含むバリューチェーンでつながっている。
一方中国では、米中の貿易摩擦について、米国産農産物の輸入拡大などで妥協しながら国内の食料自給率を引き上げようとするなど、貿易黒字を調整しつつ時間稼ぎをする姿勢を示し、米国を過度に刺激しないようにしている。
また、安全保障にかかわるテクノロジー関連については、大きすぎる米国への依存を改めるために、政府がテクノロジー関連の投資を拡大しようとしている。結果として、2020年に入ってから、テクノロジー銘柄が多い深圳総合指数は、銀行や従来型産業が多い上海総合指数を上回るパフォーマンスとなっている。
簡単に言えば、米国にとって中国との対立激化は産業に良くないが、中国にとってはできるだけかわせば良いということだろう。
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