【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する:告発された「パワハラ」の実態(8/10 ページ)
「ワタミの宅食」で起こった残業代未払い問題。それだけでなく資料改ざんやパワハラなど、「やっぱりワタミはまだブラックだったのか?」と思わせるような実情が告発された。本当にワタミはブラック企業へ回帰したのか。内部取材を敢行すると、思わぬ事情が見えてきた。
Aさんが訴えた「パワハラ」と「休職」の経緯
Aさんが上司から受けていたと訴えるパワハラについても、休職前後の出来事から振り返ってみよう。
本年7月上旬、Aさんとの間でトラブルがあり辞めていた元スタッフからAM宛に連絡が入った。元スタッフが在職中に担当していた顧客から「注文した弁当が届いていない」との問い合わせがあったというのだ。それも2日連続の出来事だった。AMからAさんに連絡したがつながらず、その日の夜になってメールで「お届け完了」との報告がなされたという。
しかし翌日確認したところ、まだ弁当は顧客の元に届いていなかった。AMからスタッフに確認を入れたところ、スタッフより「お届けが完了していない顧客が他にも複数いる」ことと、「Aさんより返金対応するよう指示があった」旨の報告を受けた。異常を感じたAMとその上司である支社長は即日営業所を訪問し、Aさんに事実確認を行った。
「お弁当はお届けしている」
しかしAさんは「お弁当はお届けしている」と回答するのみ。支社長から「お客さまとスタッフに事実確認している」旨を伝えたところ、Aさんは観念した様子で、弁当を届けていない事実を認めたのだった。このときAさんは、AMと支社長に次のように語った――「正しい判断ができない状況だった。医師より休むように言われている」「しかし、休んだら復職した後の配置がどうなるか不安」。
心配した支社長は、Aさんの体に配慮して配置転換を考えることを伝えた。するとAさんは「所長としてやり切った。現在の営業所に未練はない」「いつから休みに入るか家族と相談して、明日AMに伝える」と回答したので、その日の面談はそれで終了したのだった。しかし翌日、事態は急展開する。
これまでの態度を大きく変え、AさんはAMへ「支社長より休みを強要された。これはパワハラであり、休みは撤回する」と伝えたのだ。その後、営業所に出社したAさんは、朝礼でスタッフに対して「私に対する皆さんの誹謗中傷によって異動が決まった。誰が告発しているのか?」と発言。AMがAさんを地道に説得した結果、一時は異動に対して前向きな姿勢を見せたのだが、AMが主催した営業所ミーティングにおいてAさんの異動が伝えられた際、一部のスタッフが安堵の表情を見せたことがAさんの気持ちに変化を起こさせたようだ。
執拗に内部通報者を知りたがる
後日、Aさんからスタッフ宛に一斉メールが送られ、そこには「私の異動を喜んでいる者がいる。1人でもそのような者がいる限り、異動を拒否する」と書かれ、AMに対しても「今の営業所で引き続き所長を全うする」との連絡が入った。AMは営業所に直行してAさんと面談したが、Aさんは「新しい営業所へ行っても、自分の言うことを聞かないスタッフはどんどん辞めさせる」という趣旨の発言をしたため、AMは「Aさんも苦手な人がいるように、スタッフからもこれまでのAさんの営業所運営について訴えたいという人も出てきている。お互いのために離れた方が良い」と説得を続けた。
その後Aさんからは休暇申請が出されて休職に入ったが、休職初日、Aさんは後任の所長が着任して朝礼をしているときに突然営業所に来訪し、スタッフをにらみつけて居座り、メールを送り付けるような脅迫行為をしたと報告されている。またその時期に並行して、AさんやAさんの家族からはAMや会社宛に「(Aさんを)訴えようとしているスタッフは誰だか教えろ」と執拗(しつよう)に連絡が入っていた。Aさんから渡邉会長あてに手紙が送られたり、労基署に労災申請が出されたりしたのはその騒動の後のことであった。
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