アリババ「独身の日」セール、2020年は期間4倍 〜「ニューノーマル」で構造見直し:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)
世界最大のECセール「独身の日」が中国で始まった。売上高を更新し続ける同セールだが、インタネットやEC人口は頭打ちで、構造改革を迫られていた。ここでは、セールの歴史をおさらいしつつ、コロナ禍の「ニューノーマル」が、構造の見直しに好機となっている今年の動きを紹介したい。
決済日を分散、消費者と企業双方にメリット
独身の日セールの売上高は、過去最高を更新し続けているが、インターネットやEC人口は頭打ち状態で、この数年は購入予約期間の延長やクーポンのばらまきで数字を積み上げている面もある。19年はアリババの張勇(ダニエル・チャン)会長が、「売上高ばかり追うべきではない」とも発言、年々大がかりになっていく商戦の見直しも隠れた課題となっていた。
20年に発生したコロナ禍からの「消費回復」が中国にとっての重要キーワードとなる中、アリババもニューノーマルを利用して、独身の日のセールを組み立てなおした。
同社が選択した戦略は「セール日の拡大」だ。
アリババのECサイトは購入予約の受け付けを10月21日に始めた。独身の日セールは11月11日まで実質22日間展開されることとなり、その点は昨年までと大きく変わらない。違うのは、従来の11月11日に加え、11月1日〜3日もセールの決済日とした点だ。
消費者が10月中に商品を購入予約すると11月1日に決済が完了し、単純計算で例年より10日早く手元に届く。アリババはセール期間の「盛り上がり」を2度つくることができ、出店企業と宅配業者は出荷のピークを分散して負荷を軽減できる。
誰にとっても利益がある見直しだが、アリババは「11月11日の売り上げを伸ばす」ということが求められ、商戦のマンネリ化を指摘されながらもこれまで抜本的な見直しはできなかった。アフター・コロナの消費回復という大義名分を背に、消費者、出店企業、物流会社のニーズをくみ取った形に商戦を組み替え、あるべき姿に調整できたといえる。
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