アリババ「独身の日」セール、2020年は期間4倍 〜「ニューノーマル」で構造見直し:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/4 ページ)
世界最大のECセール「独身の日」が中国で始まった。売上高を更新し続ける同セールだが、インタネットやEC人口は頭打ちで、構造改革を迫られていた。ここでは、セールの歴史をおさらいしつつ、コロナ禍の「ニューノーマル」が、構造の見直しに好機となっている今年の動きを紹介したい。
ニューノーマルを利用しセールの課題に対応
新たに独身の日セール日に指定された11月1日、アリババは早速、以下のような「1」にまつわるさまざまな数字を公表した(リンク:英文・中文)。
- 11月1日0時11分、最初の荷物が配達された。受け取ったのは蚊取り線香を注文した武漢市の消費者
- セール開始111分で、ナイキ、アディダス、ファーウェイ、アップル、エスティーローダー、ランコムなど100ブランドがGMV(流通総額)1億元(約16億円)以上を突破
アリババは、コロナ禍で海外旅行に行けない消費者のため、菜鳥網絡がフライト700便をチャーターし、越境ECの配送スピードを上げることや、200都市で注文から1時間以内の配送を行うことも発表。また、社会のデジタル化を反映し、大量の不動産や車を目玉商品として販売している。
ECサイト「Tmall(天猫)」は期間中に300億元(約4700億円)のクーポンを配布。昨年より3億人多い8億人が買い物をすると見込んでいる。
11月11日には、1日〜3日の数字も加えた決済額が、独身の日セールの結果として発表され、それは19年より大きな数字となるだろう。その数字をもって中国の消費回復を世界に見せつけることになるだろうし、来年以降もアリババは今年の形式を踏襲して決済・配送を分散させる可能性が高い。
03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)を成長の機会に変えたアリババは、世界の混乱をよそに、コロナ禍も同じように追い風にしていくのだろう。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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