「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
70歳まで会社にしがみつくおじさん
先ほどの元管理職の男性のように、若手がやるような仕事を振ったらむくれるかもしれない。ジョブ型雇用に切り替えたら切り替えたで、能力をシビアに評価したり、独立を促すようなことを言ったりしたら逆ギレするかもしれない。それだけならばまだマシで最悪、「長年尽くしてきた会社に裏切られてパワハラを受けた」なんて人事トラブルに発展するかもしれないのだ。
考えすぎだとあきれる方も多いかもしれないが、一般社会では、「暴走老人」「キレる老人」などの言葉に象徴されるシニアトラブルは多発している。老化による脳の萎縮で“怒り”という感情を抑えるブレーキが利きにくくなることは医学的にも分かっているのだ。
そこで、想像していただきたい。ヘタすれば自分の祖父ほど歳の離れた60〜70代のおじいちゃんたちの機嫌を取らなくてはいけないような職場で、若い世代の社員たちはモチベーションを維持できるだろうか。中には、「オレもあと40年ガマンすれば、この人たちのようにでかい顔ができる」と考えて、じっと堪えるサラリーマンの鏡のような人もいるかもしれないが、能力のある人材であればあるほど「バカバカしい」と思うのではないか。
中には、その失望が広がれば、「優秀な人材の日本企業離れ」を促進するかもしれない。多くの外資系企業は、結果を出さなければ解雇もあり得るような不安定な環境だが、シニア人材をヨイショして機嫌良く働いてもらうなどの気苦労がないぶん、まだこちらのほうがマシだと考える若者が増えていくのだ。
「70歳まで会社にしがみつくおじさん」がこれまでの役職や賃金をキープしようとバリバリ働けば働くほど、若い世代の賃金とモチベーションは下がって、会社にイノベーションをもたらすような有能な人材が流出して競争力を低下させるという「負のスパイラル」に陥ってしまう恐れがあるのだ。
それがうかがえるのが、日本企業の平均年齢だ。昭和に入ってから企業の定年は55歳が一般的だったが、1980年代に60歳に引き上げられ、今や65歳まできた。当然、企業も年々高齢化している。東京商工リサーチによれば、20年3月期決算の上場企業1792社の従業員の平均年齢(中央値)は41.4歳と過去最高齢になった。
関連記事
- なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「オレは絶対に悪くない!」という“他責おじさん”が、なぜ出世するのか
「オレは絶対に悪くないからな!」――。会社の幹部や上司の顔を思い出して、「いるいる。ウチの会社にもたくさんいるよ」と感じた人もいるのでは。なぜ、他人のせいにする人が出世するのか。その背景を調べてみると……。 - なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する
「ワタミの宅食」で起こった残業代未払い問題。それだけでなく資料改ざんやパワハラなど、「やっぱりワタミはまだブラックだったのか?」と思わせるような実情が告発された。本当にワタミはブラック企業へ回帰したのか。内部取材を敢行すると、思わぬ事情が見えてきた。 - 巷で“スーツ離れ”が起きているのに、なぜビジネスリュックは好調なのか
テレワークを実施する企業が増えたので、オフィスに足を運ぶ人が減った。となると、スーツを着ることが少なくなり、革靴を履かなくなり、カバンも不要になり……。などと想像してしまうが、ビジネスリュックは好調に売れているという。その背景に迫ってみたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.