「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
シニア経営者がバリバリ働く
関東大震災が起きてまだその傷跡も癒えぬ1923年12月26日、後に「議会政治の父」と呼ばれる尾崎行雄は、こんな演説をしている。
「由来老人は決断力を欠くから老人に政治を任せるのは甚だ誤つている」「自分は老人でいながら老人排斥するのは可笑しいと思はれるかも知れぬが私は老人内部の裏切り者となっても飽くまで老人に政治を委ねるべきではないこと主張したい」(読売新聞 1923年12月26日)
1925年には、陸海軍で「武功」のあった大将や中将を「軍事上の最高顧問として終身現役」にする慣例が時代遅れだということで、海軍の山本権兵衛元帥がこんなことを言い出した。
「モウロクしたヨボヨボ元帥を退役させる停年制 但し称号と名誉は保留する案」(読売新聞 1925年4月13日)
「老害」は世界で見られる人類共通の「病」である。ソ連を真似て終身雇用という制度が急速に普及した近代日本では、それがより深刻な問題となった。そこで、シニアの暴走を防ぐために「定年制」が設けられた側面もあるのだ。しかし、今の日本では少子高齢化を理由に、その「老害防止システム」が無力化されて、大正時代に逆戻りしている。
経団連の中西宏明会長(日立製作所)は74歳。日本電産の永守重信氏は76歳。ファーストリテイリングの柳井正氏は71歳。ニトリの似鳥昭雄会長は76歳と、シニア経営者がバリバリ第一線で日本経済のかじ取りをしている。帝国データバンクによれば、日本の社長の「平均年齢」が、19年は過去最高の59.9歳になったという。
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