SKYACTIV-Xアップデートの2つの意味:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
SKYACTIV-Xがバージョンアップする。新バージョンの発売は来年初頭とアナウンスされている。さて、となると興味はいくつかに分れるだろう。何がどう良くなるのかと、何で今バージョンアップなのか。おそらくその2つが焦点になる。
インプレッション
さて、元サーキットでもあるテストコースでの試乗にもかかわらず、試乗のインプレッションに至る前が馬鹿みたいに長いところが筆者らしいが、この改良でクルマがどうなっていたかを最後にレポートしよう。今回美祢では、本コース以外にコース外の移動路や駐車場を使ったパイロンスラロームなどが加えられた特設コースが用意された。
特に広い駐車場に設置された大きな連続S字のスラロームでクルマの特性がよく分かった。オーバースピード気味に進入して、アクセルをオフにすると、リヤタイヤが穏やかに滑り始める。今やこんなセッティングをするのはほぼマツダだけで、記憶にある限り、こういう挙動を示すのはダイハツのコペンだけである。アクセルオフでリヤが出て、オンでそれが収まる。ちなみにマツダの人はこれをバランススロットルと呼ぶそうだ。
アクセルオフによって、リヤ荷重が抜けて、巻き込み系のオーバーステアが起きた時、アクセルを軽く踏み足してやると、リヤの荷重が増えてスライドが止まる。ステアリングだけでなく、アクセルでアンダーとオーバーをコントロールするセッティングだ。このパートをスピリット1.0と1.1で比較すると、明らかに1.1の方がバランススロットルの自由度が高い。挙動変化をより高い解像度で楽しめるようになっている。
こういう変化を魅力的だと思う人にはとても良いアップグレードなのだが、信号グランプリでは大して役に立たない。そういう考え方を筆者は好ましく思うが、さて市場の受け止めやいかにというところだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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